【不妊治療情報③】不妊治療のやめ時はいつ、どうやって、誰が決める?クリニックが必ずしも提案してくれるとは限らない

「体外受精さえすれば妊娠できるはず」そう思ってステップアップする人は少なくありません。
しかし、4回、5回と続けても妊娠には至らない、年齢的に40歳を超えた。
そうなると次に考えないといけないのが不妊治療のやめ時です。

 

不妊クリニックが治療のやめ時を示唆してくれるとは限らない

以前、クリニックの医師からこのような話を聞いたことがあります。

「不妊治療クリニックが治療の辞め時を示唆する必要はない」
「妊娠したいという気持ちを生理がある以上否定できないとの同じで、体外受精も可能性がある以上辞め時を提案する必要はない」
という内容でした。

実際に東京都の各クリニックの患者分布をみていても、40歳以上が半数を超えるクリニックがいくつもあります。
クリニックによっては43歳以上が一番ボリュームゾーンだというクリニックも…

でも、残念ながら40歳以上の出産率は高くありません。
総治療数当たりでみれば、40歳を超えると出産率は10%以下に、43歳を超えると5%以下になります。

それでも…
「患者が希望するなら、患者が通院を続けるのであれば、治療を提供し続ける。治療をやめるかどうかを決める権利は医療者側ではなく患者側にあるのだから…」という考えで診療されているクリニックは少なくないのではないかと思います。

クリニック側から、必ずしもやめ時を提案してもらえるわけではないことを患者側も知っておく必要があります。

 

 

不妊治療のやめ時までサポートするのがクリニックの本来の役割なはずなのでは?

不妊治療というのは、他の病気と違って治療の結果が出なくても治療当事者の命やQOL(生活の質)に直接影響が出てくるわけではありません。
(間接的には様々な影響がありますが)

例えばがんであれば、治療が上手くいかないとがんが進行して命にかかわることもあります。
アトピー性皮膚炎などであれば、命にかかわるところまではいかなくとも(脱ステなど不適切な治療の場合は命に関わる場合もありますが)、かゆみや酷い肌荒れ等で日常生活もままならないほどQOLが下がることもあります。

しかし、不妊治療は結果が出なくても、メンタル面での影響等はあるものの、目に見えて状態が悪化することや、命にかかわることはほとんどありません。
またクリニックでは気丈にふるまっているため、メンタル面での影響に気が付いていない可能性もあります。

そのせいもあってか、「患者が治療を望んでいるから…」という言葉を盾に終わりの見えない治療を繰り返すクリニックも少なくありません。

しかし、本来不妊治療のやめ時までサポートするのがクリニックの役割ではないかと思うのです。

以前参加した不妊カウンセリングの講座でも、「可能性が低くなってきたら終わり時も一緒に考えていく必要がある」という話を聞いたことがあります。
しかし、残念ながらやめ時まできちんとサポートをしているクリニックを私自身は聞いたことがありません。

そもそも、ほとんどの患者は不妊治療に関する情報や知識は、ネットや書籍類で仕入れた程度しかありません。
今自分がどのような状況なのか(妊娠・出産の確率 採卵できる確率 良好胚盤胞まで到達できる確率など)患者側はほとんど知る由がありません。

しかし、医師は違います。
血液検査でのホルモン値や卵胞の発育具合、受精後の卵子の状態…
様々な情報から、ある程度の妊娠率が今後については予測することが可能です。

だからこそ納得できるような治療の最後を迎えられるように助言していくのも、不妊治療クリニックの役割なのではないかと思うのです。

採卵できなくなった、胚盤胞にならなくなったから終わりではなく、ある程度の時期から治療の終わりについて説明していく必要があるのではないでしょうか?

なぜ患者は不妊治療を続けるのか?

患者が不妊治療を続ける理由の一つに、”妊娠できるから医師は治療をしている”と思っていたという話を聞いたことがあります。
ある程度妊娠の可能性があるから医師は治療を提供していて、妊娠の可能性が低くなれば医師がやめ時を示唆してくれるはずと思っている人が一定数いるのです。

医師は…「患者が治療を望むから続ける」
患者は…「医師が治療を続けるから通院する」

治療をするという点では一致していますが、お互いにどちからが「治療終わり」の言葉を待っている状態なのです。

そしてそこには医師が治療を続ける限りは希望を持っていいんだと…わずかな希望を頼りに治療を続けているカップルもいるのです。

もちろんカップルの「子どもが欲しい」気持ちを否定することは出来ません。

でも治療はただではありません。
採卵できても出来なくても、受精してもしなくても、着床してもしなくても、妊娠反応が出ても出なくても全てにお金がかかってきます。
今後保険適用により費用は幾分か下がるでしょうが、それでも治療を繰り返せばそれなりの金額になってきます。

だから、医療側が医学的限界をきちんと示唆してあげるのってとても大切なことだと思うのです。

 

体外受精にステップアップする時にやめ時を考えておくことが大切

治療のやめ時まで一緒に考え、サポートしてくれるクリニックはまだまだ多くありません。
治療をどこでやめるか?は自分達で決めなければいけません。

しかし、そのやめ時を決めることは簡単なことではありません。

もしかしたら次の採卵で摂れた卵子で妊娠できるかもしれない…
後1回続けたら妊娠できるかもしれない…
そう考えれば考えるほど、治療をやめる踏ん切りがつかなくなります。

だからこそ、体外受精にステップアップする前に「治療の区切り」を決めておくことが大切です。

これから体外受精をする人にやめ時をきめましょうというのは酷かもしれません。
でも、始まってしまえば冷静に立ち止まることは難しくなります。

・体外受精を6回したら
・2年治療を続けたら
・40歳になったら

何か区切りになるタイミングを決めておいてください。

ただ今後の保険適用に治療回数上限が設けられればそれにあわせて回数を決めておくのも一つです。
場合によっては「体外受精3回」等で転院を検討タイミングを設けておいてもいいかと思います。

また自分でやめ時を決めるのは難しいという場合は、カウンセリングなど相談や患者ケアが充実しているクリニックを選ぶのも一つの方法です。

 

採卵できないなどの理由がない限り、不妊治療の終わりは医師が決めてくれるわけではありません。
自分達で決める必要があります。
だからこそ治療開始の時にどのような治療を進めていくのか、終わりを決めるタイミングはどうするのか?などをきちんとお二人で話し合ってから、体外受精にステップアップすることをお勧めします。

 

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