不妊治療の保険適用⑤ 保険診療で出来ること、出来ない事

不妊治療 保険適用

*こちらの記事は2024年3月時点の内容になります

不妊治療の保険診療がスタートして、今年の4月で2年が過ぎようとしています。スタート当時は混乱を極め、医療関係者からも保険診療に関して否定的な意見が飛び交いました。

その結果、何を選べばいいのか?本当に保険診療を選んでもいいのか?と悩んだ人も少なくなかったように感じます。

また、ネット上では患者さんに誤解と不安を招くような記事も正直少なくありませんでした。

ここで改めて、不妊治療の保険適用で出来ること、出来ない事、どのようなタイミングで自費診療を選んだらよいのかを解説していきます

 

保険診療は全ての人が同じ治療内容ではない

よく耳にする誤解のひとつに、「保険診療の内容は全て決まっており、患者に合わせた今までの診療が出来ない」という内容があります。

確かに、保険診療では使用できる薬剤の種類や量に制限はあります。しかし、だからといってだれかれも全く同じ薬しか処方できなくなったのか言えばそうではありません。

保険診療の範囲内で個々の状態に合わせた治療方針を提案されているクリニックはたくさんあります。実際に保険適用前と保険適用後で妊娠成績は変わっていないという報告を聞くこともあります。

 

保険診療で出来ること

保険診療で出来ること 不妊治療

*厚生労働省 「不妊治療に関する支援について」を元に作成
https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/bef0ee9a-c14d-4203-b02b-051adf80f495/eb41dadb/20230401_policies_boshihoken_funin_03.pdf

 

採卵の場合であれば…
・自然周期採卵
・低刺激法からの採卵
・調整卵巣刺激法(高刺激)
から刺激方法を選ぶことが可能です。

調整卵巣刺激法の場合は、さらにロング法、ショート法、アンタゴニスト法、PPOS法など様々な誘発方法の中から、一番適したものを医師が選びます。

一言で低刺激法といっても、個々にあわせて使う薬剤の種類や量を調整していきます。

 

移植に関しても…
・初期胚移植or胚盤胞移植
・新鮮胚移植or凍結胚移植
・自然周期移植orホルモン補充周期移植
などの選択肢があります

 

培養に関しても
・卵子活性化
・アシステッドハッチング
・高濃度ヒアルロン酸含有培養液
などをオプションとして選択することも可能です(取り扱いのあるクリニックに限る)

このように、保険診療の中でも個々の状態にあわせた選択が可能であり、全ての人が全く同じ内容で治療を受けているわけではありません。

確かにクリニックによっては独自のルールを設定し、保険診療で出来ることに制限を設けているところもあるようですが、そのような場合は別のクリニックに転院すれば、保険診療内でも治療選択肢が広がる場合があります。

 

先進医療として保険診療と組み合わせが可能なもの

先進医療 不妊治療

 

先進医療の申請には、生殖医療専門医が在籍しているなどの条件があるため、全てのクリニックで実施が可能でありませんが、条件を満たし、先進医療の申請をしているクリニックであれば、上記の内容が保険診療と組み合わせることが可能です。

もし上記の項目を希望した際に自費診療への移行が必要と言われた場合は、先進医療が可能なクリニックへ転院することも考えてみてください。

ただし先進医療BのPGTAとタクロリムスに関しては、実施可能なクリニックが限られているため、自費診療への移行も検討する必要があります。

 

保険診療で出来ない事

PGTに関しては、先進医療Bのため、2023年度は大阪大学を中心に一部のクリニックでしか保険診療と併用できず、回数等の条件も厳しく制限されていました。(2024年度の実施については詳細が未定ですが、準備はされているようです)

そのため、保険診療との併用は現時点ではクリニックが限られている点から、通院できるかどうかというハードルが出てきます。通院範囲内のクリニックが対象となればいいですが、そうでなければ自費診療も検討する必要が出てきます。

PGT以外に保険診療で出来ない治療には
・PRP療法などの再生医療を用いた治療
・通常の誘発では採卵できないため、特殊な排卵誘発方法を用いる場合
・早発閉経対策のための連続採卵
などがあります。

また不育症などの検査項目によっては保険が適用されないものがあります。クリニックによっては、最初の治療計画を立てる前に、保険が効かない検査を行うという方法をとっているところもあります。

保険診療項目に入っていない検査に関しては、様々な意見がありますが、出来る範囲の検査はしておきたいと考えている場合は、治療計画前に自費検査を行っているクリニックを選ぶのもひとつです(ただし費用は高額になるので注意が必要です)

 

事前に保険診療で出来ることと出来ないことを確認しておこう

クリニックを選ぶ際に、まずは保険診療での方針を確認しましょう。ホームページに記載がない場合は、病院の説明会などで確認することをお勧めします。

ほとんどの治療内容は、保険でカバーできますが、クリニックよっては保険診療の内容に制限を設けている場合があります。

例えば、保険診療では刺激方法が選べず、低刺激がメインのクリニックや、初回は初期胚の新鮮胚移植しか行わないというような独自ルールを決めているところもあるようです。

あまりに独自ルールが多い場合は、別のクリニックを検討や、移植を数回行ったタイミングで転院を検討することも考えておきましょう。

不妊治療において保険診療で出来ることは、思っている以上にたくさんあります。最初から自費診療が必要な人はそう多くはありません。

保険回数が残っている時点で自費診療を勧められた場合は、保険診療や先進医療
で出来ることはもうないのか?をチェックすることをお勧めします。

 

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