【不妊治療保険適用①】 不妊治療の保険適用 4月から何がどう変わる? 注意点は?(タイミング治療 人工授精編)

3月に入ってようやく情報が出そろってきました、4月からスタートされる不妊治療の保険適用。正直、スタートしてみないとわからないことも多々ありますが、何がどのように変わるのでしょうか?私達が保険適用開始に向けて気を付けておくべきことは?
現時点でわかっていることを中心に、この記事では不妊スクリーニング検査・タイミング治療、人工授精の保険適用について解説していきます。

 

関連記事
不妊治療保険適用 4月から何がどう変わる? 注意点は? 体外受精・顕微授精編(作成中)
不妊治療の保険適用 先進医療って何? 先進医療になる項目は?(作成中)
不妊治療 保険診療と自費診療何が違う? 選ぶ基準は? 注意点は?(作成中)

*この記事は2022年3月16日に出された厚生労働省の資料を基に作成しています。

 

不妊スクリーニング検査、タイミング治療、人工授精の変更内容・費用は?

不妊スクリーニング検査と費用

不妊スクリーニング検査は現時点ですでに保険診療項目ですので大きな変化はありません。
ただし、引き続きAMH検査や風しん抗体検査、感染症類の検査は保険診療外の検査項目になります。
(AMH検査は体外受精時は保険診療で検査が可能です)

不妊スクリーニング検査は、1周期から2周期ほどかけて検査を行います。
費用は保険診療外の検査をどれだけするかにもよりますが、2万円~5万円ぐらいになります。

また、保険診療がスタートすると、保険診療外の検査のタイミングが難しいため、治療がスタートする前に、保険診療外の検査も済ませてしまうクリニックも今後出てくるでしょう。
既に、ビタミンDの検査などを不妊スクリーニング検査に組み込んでいるクリニックもあります。このようなクリニックの場合はスクリーニング検査の費用が高くなりますので、費用が気になる場合は事前にきちんと確認しておきましょう。

精液検査に関しては現時点で保険診療項目ですが、保険診療外項目に設定しているクリニックも多くあります。
測定方法と測定項目が保険診療とは違うクリニックもありますので一概にどちらが良いとは言えませんが、出来るだけ費用を抑えたい場合はまずは保険診療で検査が可能なクリニックにいくのも一つかと思います。
精液検査は自費診療で5000円程度、保険診療だと210円(70点)になります。

 

タイミング治療

タイミング治療もすでに保険診療項目ですので特に大きな変化はありません。
今後変化があるとすれば、使用できる排卵誘発剤やエコー、血液検査の回数等かと思います。

1周期にかかわる費用は、排卵誘発剤の有無や種類、超音波エコーの回数によっても変わってきますが、数千円から2万円ぐらいまでではないかと思います。

 

人工授精

人工授精は4月から保険診療項目になります。
1回の人工授精の費用は5460円(1820点)。この費用には精子の前処理も含まれます。
排卵誘発剤や超音波エコーなどの費用は別途必要となります。
排卵誘発剤の有無や種類、超音波エコーの回数は個々で違うため、1周期の人工授精の費用は個々で差が出てきますが、1万円~2万円前後になるのではないかと思います。

人工授精の実施に当たっては、密度勾配遠心法、連続密度勾配法又はスイムアップ法等により、精子の前処置を適切に実施すること

と記載があるため、精子の前処理が適切に行えない医療機関では人工授精は行えなくなります。

 

年齢制限・回数制限は?

タイミング治療や人工授精は年齢制限も回数制限もありません。患者が希望し、医師が必要と判断すれば治療が可能です。
ただし、タイミング治療は半年から1年、人工授精は3回から5回程度が一つの目安です。この期間に妊娠至らない場合はステップアップを検討することをお勧めします。
また年齢によってはタイミング治療や人工授精無しで体外受精にステップアップしたほうが良い場合もあります。

 

事実婚でも保険適用が可能

2021年4月から事実婚でも不妊治療の助成金申請が可能になっています。同様に保険診療に関しても事実婚でも保険診療が可能になります。

ただし、事実婚の場合はいくつかの条件を満たす必要があります。
厚生労働省のHPより一部抜粋

事実婚の確認
ア 当該患者及びそのパートナーが重婚でない(両者がそれぞれ他人と法律婚でない)こと。
イ 当該患者及びそのパートナーが同一世帯であること。なお、同一世帯でない場 合には、その理由について確認すること。
ウ 当該患者及びそのパートナーが、治療の結果、出生した子について認知を行う 意向があること。

クリニックによっては書類の提出を求められることもあるため、事実婚で不妊治療を希望する場合は、事前にクリニックに必要な書類等を確認しておくといいでしょう。(HPに記載されているクリニックもあります)

 

新しくできた「一般不妊治療管理料」とは?

4月からの不妊治療の保険診療に伴い、新しく「一般不妊治療管理料」と言う項目が出来ました。

厚生労働省のHPより一部抜粋

治療計画を作成し、当該患者及びそのパートナー(当該患者と共 に不妊症と診断された者をいう。)に文書を用いて説明の上交付し、 文書による同意を得ること。
少なくとも6月に1回以上、当該患者及びそのパートナーに対して治療内容等に係る同意について確認するとともに、必要に応じて 治療計画の見直しを行うこと。なお、治療計画の見直しを行った場 合には、当該患者及びそのパートナーに文書を用いて説明の上交付 し、文書による同意を得ること。
初回の治療計画の説明に当たっては、原則として当該患者及びそのパートナーの同 席の下で実施すること。ただし、同席が困難な場合には、その理由を診療録に記載するとともに、やむを得ない事情がある場合を除き同席ができなかった者に対しても以 後の診療機会に説明を行い、同意を得ること。

この内容から夫婦で受診が原則になり、男性もスクリーニング検査の段階で精液検査を受けることが必要となります。

ただ一般婦人科や産婦人科の中には、今まで精液検査を行わずに不妊治療(主にタイミング指導)を行っていたクリニックもあります。

今後クリニックを選ぶ際には、卵管造影検査、精液検査を含めて夫婦の検査をきちんと行い、治療計画を作成し、夫婦に説明してくれるクリニックを選ぶようにしましょう。
また半年ごとの治療計画見直しの際には、このまま同じ治療を続けていいのか?それともステップアップをした方がいいのかもきちんと確認されることをお勧めします。

今までは明確な説明もなく、1年以上タイミング治療を続けていたり、人工授精を10回以上繰り返していたりするなんていう話を伺うことも多々ありました。治療計画作成がこのような状態の歯止めになればいいのですが…そして、患者側からも医師に自分の治療の方向性について聞く機会になればと思います。

 

一般不妊治療をやめる婦人科(産婦人科)が出てくるかも?

4月から保険適用スタートにあたり、クリニックの基準も明確化されました。

厚生労働省のHPより一部抜粋

当該保険医療機関内に、産科、婦人科若しくは産婦人科について合わせて 5年以上又は泌尿器科について5年以上の経験を有する常勤の医師が1名以 上配置されていること。
当該保険医療機関において、不妊症の患者に係る診療を年間20例以上実施
いずれかを満たすこと
ア 生殖補助医療管理料の施設基準に係る届出を行っている こと。
イ 生殖補助医療管理料の施設基準に係る届出を行っている 保険医療機関との連携体制を構築していること。
人工授精の実施に当たっては、密度勾配遠心法、連続密度勾配法又はスイムアップ法等により、精子の前処置を適切に実施すること。

患者目線で見れば、最低限の年間症例数も生殖補助医療管理料の施設基準に係る届出を行っている保険医療機関(以下指定医療機関と記載)との連携体制や人工授精時に精子の前処置を行う事は必須であり、このように明文化されることで一定の質の担保につながるのではないかと考えています。

ただ、今まで一般不妊治療の診療を行っていたクリニックの中には、これを機に一般不妊治療の診療を中止するところも出てくるのではないかと感じています。指定医療機関が多い都市部は問題ありませんが、地方では近くで一般不妊治療が受けられるクリニックが減ってしまう可能性も考えられます。

現在指定医療機関ではないクリニックに通院中、もしくはこれから通院を考えている人は、4月からも引き続きタイミング治療や人工授精が可能かどうかをあらかじめ確認しておきましょう。令和4年9月30日までは経過措置で現状のままでも診療が可能なため、9月末で診療を終わりにするクリニックが出てくるかもしれません。

これから不妊治療を始めるためにクリニックを選ぶ際は、まずは指定医療機関の中から、一般不妊治療を行っているクリニックを探すことをお勧めします。

指定医療機関
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000047346.html

ただ地方の場合は、指定医療機関から探すと近くにクリニックがないことがあります。
その場合は、卵管造影検査、精液検査をきちんと行い、治療計画を立ててくれ、指定医療機関と提携している一般婦人科を探しましょう。

 

 

元々、不妊スクリーニング検査やタイミング治療の一部は保険診療だったため、一般不妊治療は人工授精が保険適用になった以外はそこまで大きな変更はありません。ただ、不妊治療スタート時のクリニック選びはその後の治療の進め方にも大きな影響を及ぼします。計画的に治療を進めてくれるクリニックを選ぶ必要があります

 

参考情報
厚生労働省HP
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kodomo/kodomo_kosodate/boshi-hoken/funin-01.html

関連記事
不妊治療保険適用 4月から何がどう変わる? 注意点は? 体外受精・顕微授精編(作成中)
不妊治療の保険適用 先進医療って何? 先進医療になる項目は?(作成中)
不妊治療 保険診療と自費診療何が違う? 選ぶ基準は? 注意点は?(作成中)

 

 

 

information

笛吹和代のプロフィール・実績はこちらから

不妊治療と仕事の両立支援に関するコンサルティング(単発)

企業・行政向けサービスの案内

 

メルマガの案内

 

 

 

 

 

 

 

個別相談の案内

臨床検査技師・認定不妊カウンセラーの資格を持つ専門家が妊活・不妊治療のご相談にのります

現在、オンラインで開催中

妊活個別相談

 

 

 

 

 

 

 

お問い合わせ

研修講師・執筆などのお仕事の依頼も受けております。

 

 

 

 

 

 

書籍の案内