【不妊と少子化】産みたい、授かりたいと望む人の支援を

先日、厚生労働省が2019年の合計特殊出生率を発表し一部で話題となりました。

厚生労働省が5日発表した2019年の人口動態統計で、1人の女性が生涯に産む子どもの数にあたる合計特殊出生率は1.36と、前年から0.06ポイント下がった。4年連続の低下で07年以来12年ぶりの低水準になった。

参照:https://www.nikkei.com/article/DGKKZO60071090W0A600C2MM8000/

ただ多くの人が想像した結果であり、昨年秋に出生数が90万人割れするとニュースになった時ほどは話題にはなっていないかなという印象も受けますが・・・

ただし、このようなニュースが流れる度に言われるのが、結婚しない男女の増加と晩婚化が少子化の要因だと・・・

確かに、結婚を望まない男女も増えたでしょうし、結婚の時期が遅くその結果妊娠にたどりつかない夫婦も増えたことは事実でしょう。
でも、そこばかりに目を向けていても何も解決しないのはここ10年ほどで明らかになったのではないかとも思います。

人の意思を変える事は出来ません。
結婚を望んでない人、子供を望んでないカップル、望んで1人っ子を選んでいるカップルに、結婚することを求めたり、2人、3人産む事を求めても今後大きな進展はないように感じます。

子供を授かりたいと願っているが、なんらかの理由で諦めている人や、頑張ってもなかなか授からない・・・
そんな人達に手を差し伸べた方が少しでも改善の兆しが見えるのではないかと思うのです。

団塊ジュニア(日本で1971年から1974年に生まれた世代)やポスト団塊ジュニア(主に1975年生まれから1981年生まれ)世代が生殖適齢期から離れていく今、1日でも早く対策を打たなければ取り返しのつかない状況になってしまうのではないかと思います。

 

 

産みたい、授かりたいと願っている人の支援を

この少子化対策の話になると上がってくるのが、「産める人に後、1人、2人産んでもらおう」という意見です。
そういうような意見を見る度に「産める人」ってなんなのだろう?と思ってしまいます。

「一人出産出来たら、2人目、3人目は容易く妊娠できる・・・」そんな風に思っている人も少なくないようです。
しかし、正直、産めるか、産めないかはその時になってみないとわかりません。
実際にご相談者さんには2人目不妊はもちろんのこと、3人目、4人目で悩んでいる人もいるのです。
過去にはお子さんがもう既に4人いらっしゃる方からご相談を受けた事もあります。

また、3人4人お子さんがいらっしゃっても・・・不妊・流産・死産に悩みながら何年もかかって数人のお子さんを授かられている方もいます。

「産める人に産んでもらおう」これほど無責任な言葉はない・・・といつも思ってしまいます。

「産める人に産んでもらおう」ではなく、「授かりたいと頑張っている人、本当はもう一人、もう二人と願っている人」をサポートすることが今の社会に必要な事ではないのかと思うのです。

 

本当はもう一人、もう二人と思っている人々の本音

日本は決して、妊娠・出産・子育てにやさしい社会とは言えません。
そして、それらはこのコロナ禍でも浮き彫りとなりました。

妊婦であるにも関わらず、新型コロナウイルスの感染におびえながらも仕事を休むわけにもいかず通勤を余儀なくされた人も少なくありませんでした。
新型コロナウイルス下での妊婦の働き方に国が言及したのはかなりの日数がたってからでした。

そして突然の休校宣言にあたふたした保護者も少なくありませんでした。
それらはどちらかかというと女性の肩に伸し掛かっている事が多かったように思います。

これらの状況を見ながら、子供を持つことにためらいを感じた人もいたのではないでしょうか?

そしてこれらは決してコロナ禍で始まった事ではありません。
以前からずっと言われ続けてきたことなのです。

2人目、3人目を持たない(諦める)選択をする背景には何があるのでしょうか?

・経済的な問題
・保活の問題
・ワンオペ育児の問題
・子育てと仕事の兼ね合い
・会社での立場の問題
・産後鬱
・2人目、3人目不妊で授からない
・年齢的な問題
・2人目、3人目と不妊治療をする経済的余裕がない
・1人目の不妊治療で時間もお金も費やしてしまった
・流産、死産を繰り返し(不育症)2人目を望む気力がもうない
・子育てをしながら不妊治療の継続の難しさ

あげだしたらキリがありませんが、一言で2人目、3人目を望まないと言っても、その裏側には様々な事情が隠れているのです。
もちろん、最終的に決めるのは個人であり、夫婦やカップルです。
でも、何かもう一つ支援があれば、若しくはどこかで躓かなければ・・・産んだかもしれないのにと言うカップルは決して少なくないと感じています。

不妊治療退職から保活への躓き

ここで少しだけ私の話を・・・
私は一人目の不妊治療時に仕事との両立に悩み不妊治療退職をしました。

我が家には子供部屋が2つあります。
今は一つは夫婦の物置部屋と化していますが、新居を立てた当初は「子供は2人」と考えていました。
そんな我が家の最初の躓きが「不妊治療退職」でした。
経済的な面もありましたが、何より社会的な居場所を失った事が、私自身の気持ちを2人目から遠ざける結果となりました。

その後、子供を実家の両親に預けながら健康診断の仕事に就きます。
当時は待機児童が多く、1歳児や2歳児の非正規社員の入園は非常に難しく、3歳児入園を狙っていましたが・・・
残念ながら3歳児でも待機児童と言う結果に・・・
最終的には認可外保育という選択をしましたが、正規の保育園の2倍以上の費用
もし、2人目が授かればまたこれを繰り返すのか・・・
そう思った時に2人目を望む気持ちは自然と無くなっていきました。

それ以外にも子供を一人抱えながら、県外の不妊クリニックに通うのは難しいだろう・・・という思いもありました。
自然妊娠に望みを託し、毎月一喜一憂しながら子育てをしていく自信がなかったというのも一つの理由です。
周りから、「2人目は?」と言われながらやきもきするより、「我が家は一人っ子を選びました」と言い切れた方が楽なのでは?そんな思いもありました。

これら以外にも言葉では言い表せない様々な思いがありましたが・・・
完全に2人目を考えなくなったのは、40歳の誕生日を迎えた頃からでしたが・・・

何か一つ違えば違う未来が待っていたのではないかな?と思う事があります。

だからこそ、少子化を簡単に「結婚しないカップルの増加や晩婚化」で片づけてほしくないなと思うのです。

 

不妊・不育患者への社会的支援を

そして何より、授かりたい、産みたい、この手に我が子を抱きたいと頑張っている、不妊・不育患者の社会的支援にもっと力を入れてほしいと思うのです。

不妊治療=高齢化=妊娠率が低い

この図式で語られることの多い不妊治療ですが、必ずしもすべての人が高齢で不妊治療を始めているわけではないのです。
結果、高齢と呼ばれる年齢になってしまっている人も少なくありません。
不妊治療界隈の闇の中に引きずりこまれている患者さんもいます。

最初にとった選択肢がその先の成果までも大きく左右するのが不妊治療の世界なのです。
でも、どのようなクリニックを選び、どのような医師に出会うのか、おかしいな?と勘付いて転院を選択するのか?それらはすべて患者の責任なのです。

誰も教えてくれなければ、誰も適切な方向へ導いてくれません。
全て自分で選択していかなければならないのです。

そしてこれは不育症の分野になるともっと酷くなります。
調査・研究すら不十分な不育症の分野。
この分野はもう少し自分なりに調べて記事にしたいと思いますが、「少子化」対策を掲げるのであれば、不妊や不育で悩む患者支援を大きな柱の一つとして組み込んでほしいなと思うのです。

仕事を辞めずに、保険適用で不妊治療を受けれたり、適切な不育症の治療が受けられれば少しは少子化の改善にも貢献するのではないでしょうか?

早い段階で体外受精にステップする事が出来れば、一人目不妊治療の際にライフプランを話し合いながら貯卵という選択が取れれば、それらが2人目、3人目に続く事になるのではないかと思います。

この「貯卵」という選択肢についてはいずれ記事にしたいと思います。

 

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