【妊活 不妊問題】 なぜ日本は不妊大国となったのか?前半

5.5組に1組が不妊に悩み、18人に1人が体外受精で産まれてくる日本。
不妊治療件数も世界で群を抜いて多い。
いつのまにか日本は「不妊大国」と言われるようになっていました。

多くの夫婦が出口の見えない、終わりの見えない不妊に悩んでいます。
決して日本の不妊治療の技術が低いわけではない。
むしろトップクラスである。
それでも多くの人が不妊に悩む。

少子化が問題視されているのに…
授かりたい人が授かれない国…それが今の日本の現状である。

なぜ日本は「不妊大国」と言われるようになってしまったのか?
思いつく要因をここに綴っていきたいと思います。

1 出産を望む年齢の高齢化
2 高額な不妊治療費の問題
3 不妊治療と仕事の両立問題
4 妊活したいのに出来なかった 二人目不妊
5 治療技術格差
6 知識・情報不足
7 必要以上の自然信仰
8 自分たちは大丈夫と言う思い込み
9 技術の前に立ちはだかる法規制

 

 

1 出産を望む年齢の高齢化

「卵子の老化」という言葉が世間を賑わして既に5年以上が立とうとしています。
女性の結婚年齢・初産年齢は段々と上昇し、平均で29.4歳 東京では30.5歳となりました(2015年人口統計より)

卵子も精子も突然老化するわけではありません。
しかし、35歳を過ぎると老化のスピードはあがると同時に妊娠率は下がっていきます。

高齢化は「不妊」においては大きな問題です。
だから「不妊」は高齢で妊娠を望んだ女性の問題として片づけられがちであり、早い年齢で妊娠・出産を考えてほしいと結ばれている文章は少なくありません。

確かに、男女ともに20代で妊娠を望めば不妊で悩む人は減るでしょう…
しかし、そうは出来ない社会背景があることも忘れてはならないのではないかと思うのです。
そして、不妊で悩む多くの女性が30代半ばでようやく妊娠について考えだしたわけではありません。
20代後半、30代前半で不妊について考えているカップルも少なくないのです。

不妊と高齢の問題についてはこちら詳しく書いているのでよければ一度目を通して頂ければと思います。

【不妊の現状】 本当に不妊は高齢だけが原因なのか?

上の記事の中に記載しなかったが、実は今現在高齢不妊で悩んでいる世代はいわゆる「失われた10年間」に含まれる世代。
2000年前後、いわゆる超氷河期と呼ばれる時代に就職活動をした世代なのである。
正社員として職に就くことが出来ず、給与も不安定な非正規社員も少なくありません。
自分が生きていく事に必死。結婚・子供のことなんて考えられないまま30代後半、40代を迎えた人も決して少なくないでしょう。

子供を望める期間はそう長くない…
そう気づいて慌てて、不妊治療を始めた人もいるでしょう。
しかし費用的な問題から、なかなか不妊治療に踏み切れなかった人も少なくないのではないか…

「不妊治療の高齢化」は決して個人だけの問題ではありません。
社会が産みだした問題でもあるのです。

 

2 高額な不妊治療費の問題

不妊治療は一部を除いてほとんどが自費診療です。
その為、体外受精・顕微授精ともなると70万、80万、クリニックによっては100万を超えることもあります。

補助金があるものの、1回目30万 2回目以降15万 (最大6回まで)と費用の半額にも満たない。
ネット等で調べると30万からなんて記載されているが、ほとんど薬を使わない誘発、採卵数も1個ないしは2個程度。凍結保存もなし、新鮮胚移植という自然に近い方法でなければ30万ほどで収まることはまずほとんどないと思っていい。
この30万と言う金額は本当に最低限の金額なのです。

その為、高額な不妊治療費を前にステップアップに二の足を踏むカップルも少なくありません。
もう少し頑張れば授かるかも…とタイミング法や人工授精を繰り返すことも…
そうしている間に年齢が進み益々妊娠しにくい状態になってしまうのです。

しかし不妊治療に何百万というお金をかけられるカップルはそう多くはありません。
結局は預金通帳とにらっめこしながら、お金が溜まれば体外受精を行う、必要な経費を捻出できなくなれば、またしばらく治療をお休みしてお金を溜める…を繰り返すカップルも少なくないのが現状です。

個別相談でもやはり心配事の一番にあっがてくるのは費用の件
ご相談の内容を伺う限り、出来るだけ早くのステップアップを勧める事が多いのだが(そもそもその状況になった方のご相談が多いということもあるが)、体外受精は費用的に1回ないしは2回が限界…と言われることも少なくない。

その間にも、精子も卵子も年齢を重ねていってしまう。

全額補助とまでは言わなくても、若い夫婦がステップアップしやすい環境を整備すること(不妊治療の保険適応 補助金の増額)が「不妊大国日本」から脱出するきっかけになるのではないかと思います。

 

3 不妊治療と仕事の両立問題

不妊治療と仕事の両立に関しては過去にも何度か提示してきたが…

35%の人が仕事と治療の両立を断念し、仕事を辞める、治療を諦める、雇用形態を変えるなどの選択をしています。
また、治療を続けているものの仕事と治療の両立に難しさを抱えている人も87%いるという結果になっています。

この点に関しては少しずつ動きはあるものの、まだまだ他人事の企業も少なくありません。

・当事者からの声が聞こえてこないから…
・必要性を感じないから…
・社会がそのような動きをしていないから…
・他に取り組まなければいけないことがあるから

等の声が企業側からも聞かれます。

不妊治療をしながらの治療はかなり大変です。
毎週月曜日 月に2回 など決まった通院が出来ず、また明日、明後日、など卵子の成長度合いによっても通院予定が振り回される事も多々あります。
事前に予定が組めないのがこの不妊治療なのです。

排卵期にガッツリ出張が重なると、その周期の治療はあきらめなければ仕方ない…なんてことも普通に起こります。
実際私自身もそのような経験をしました。
「排卵日なので出張誰かに変わって貰えませんか?」とはさすがに言いだしにくい。

繁忙期になると治療を休むか、それとも仕事を諦めるか…という選択に迫られる人もいるでしょう。

そうしているうちにステップアップが先延ばしになってしまい妊娠しにくい年齢に突入してしまうことも少なくない。

しかし仕事を辞めたら辞めたでお金の問題が今度は発生してくることになる。

 

4 妊活したいのに出来なかった 二人目不妊

「不妊」というとどうしても一人目不妊がクローズアップされがちだが、最近増えてきているのが二人目不妊の問題。

・一人目は普通に授かったから…まさか自分が…なんていう人も少なくない。
・一人目が奇跡的だったという人もいれば、年齢的な事で二人目不妊という人もいるだろう。
・一人目が問題なかったからそのうちいつか…と考えるのではなくて、1年若しくは半年で不妊検査へと進んでほしいと思う。

とはいえ…この二人目不妊には社会的な問題も複雑に絡み合っているのではないかと思う事も少なくない。

例えば…
・保育園の待機児童問題
・二人目妊活に関する会社側の牽制
などもに人目不妊の問題に関わってくるのではないかと思う。

・待機児童の問題

地域によっては育休のタイミングで保育園の退園を余儀なくされるところも少なくないと聞く。
また地域によっては年少の学年(4歳児)になっていれば育休中でも保育園を退園しなくても済むがそれ以下の年齢では退園する必要があるところもある。

保育園退園となってしまうと、次からは2人分の保活が必要になる。
なんとか保育園に入園できたとしても別々の保育園になってしまえば負担は倍増
結果的に二人目に二の足を踏む結果になってしまう。

また、上の子が保育園に残れる年齢までは妊娠しない…なんて話もよく耳にする。
その結果二人目不妊に悩んでいる人も実は少なくない。

・二人目妊活に関する会社側の牽制

産休・育休あけで会社に復帰して一番に言われるのが…
・しばらく二人目は考えてないよね。子育てって一人だけでも大変だし
・最低でも次の産休までには2年以上は開けてください
・他にも妊娠望んでいる人いるからしばらくは我慢してね
・子供一人いるから十分でしょ
・みんなで一気に産休入られると迷惑だから次は考えてください
等々…

育休明けと同時に二人目に関して牽制されることも少なくないと聞きます。

その結果、数年開けてから二人目妊活に望むも中々授かれない…

二人目不妊が増えている現状にはこのような社会的背景も少なからずあるのではないかと感じます。

 

残り5から9は後半に続きます。

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