【妊活・不妊治療の基礎知識⑤】不妊の原因は女性だけではない 不妊の原因と男女比の割合
2023年6月27日 追記・編集
以前とある番組で「不妊の原因が女性の中絶手術にあると」とあるタレントが発言し炎上した事例がありました。
この発言をそのままに真に受ける人はそこまで多くないことを願いたいところですが、不妊の原因は女性にあることがほとんどだと思っている人は実は少なくありません。
この記事では不妊の原因と男女比の割合について説明していきます。
不妊の原因の約半数は男性側に要因がある
最近はかなり一般的にはなってきましたが、不妊の原因の約半分は男性にあります。
女性のみ 41%
男性のみ 24%
男女ともに 24%
原因不明 11%
男性のみの不妊の原因だけでも24%あります。
男性は年齢関係なく妊孕性があると思われがちですが、男性の妊孕力も年齢とともに下がっていくことが分かっています。
また、喫煙や肥満、生活習慣などが精子の状態に大きく影響を及ぼしてくることも分かってきています。
生活習慣病項目である、高血圧、血糖値、コレステロールや中性脂肪などの数値の悪化も精子の状態にかかわってきます。
精力があれば何歳になっても大丈夫というわけにはいかないのです。
不妊は女性だけの問題ではなく、男性も女性も両方の問題なのです。
女性側の不妊の原因と割合
女性の不妊の原因は大きく分類すると以下のように分類されます
・排卵因子
・卵管因子
・子宮因子
・頸管因子
・免疫因子
・原因不明
(分類参照:一般社団法人日本生殖医学会 http://www.jsrm.or.jp/public/funinsho_qa04.html)
この中でも多いのが「排卵因子」と「卵管因子」の2つになります。
排卵因子とは
多嚢胞性卵巣症候群や高プロラクチン血症、それ以外にも極端なダイエットやストレス等で上手く排卵できていない排卵障害の状態を言います。
基礎体温が2相になっていない、月経周期が乱れている(通常は25日~38日 変動6日以内)場合などは、この排卵障害が考えられますので、まずは婦人科を受診しましょう。
卵管因子とは
クラミジア感染や子宮内膜症などが原因で卵管が閉塞・狭窄、卵管周辺が癒着する状態を言います。虫垂炎など骨盤内の手術を受けた経験がある場合も、卵管周囲の癒着が見られることがあります。
基本的には自覚症状はなく、卵管造影検査でわかることがほとんどです。
片側の卵管だけに異常がある場合は、自然妊娠が可能な場合もありますが、両側卵管に異常がある場合は体外受精以外での妊娠は難しくなります。
寝込むほどの月経痛がある場合や、年々鎮痛剤の量が増えている場合などは、子宮内膜症が原因で卵管が閉塞している可能性もあるため、妊娠を考えたタイミングで一度婦人科に相談し、必要なら早い段階で卵管造影検査を受けることも検討してみてください。
子宮因子とは
子宮筋腫や子宮内膜ポリープや子宮形態異常などが原因で着床を阻害している状態を言います。
子宮形態異常の場合は、着床はするものの流産を繰り返すことの方が多いとも言われています。
ただ着床(子宮因子)に関する点においてはまだまだわからない点が多いのも事実です。
最近は慢性子宮内膜炎や、子宮内フローラが着床に関わっているのではないかとも言われ、これらの検査項目が先進医療項目になっています
頸管因子
様々な理由で、頸管粘液量が少なくなった場合、精子が子宮内へ入りにくくなり妊娠が難しくなります。
この場合は人工授精や体外受精を行うことになります
免疫因子
何らかの免疫異常で抗精子抗体を産生し、不妊の原因となることがある。
状態によっては人工授精で妊娠が可能な場合もあるが、抗体価が高いと顕微授精になる場合もある。
*2023年6月時点ではこの検査は保険適用ではないため、検査を希望する場合は自費診療となる
原因不明
検査をしても明らかな不妊の原因が見つからない場合は原因不明不妊となる。この場合、原因がないのではなく、現在の検査では原因が見つけられない場合もある。
卵子と精子の受精障害や受精後の成長が芳しくない等は体外受精をしてみて初めてわかることになる。
また、卵子の老化や精子の老化などもこの原因不明不妊に含まれることになります。
男性側の不妊の原因と割合
男性の不妊の原因は大きく分類すると以下の3つに分類することが出来ます
・造成機能障害
・精路通過障害
・性機能障害
このうち約8割は造成機能障害に分類されます
造成機能障害とは
造成機能障害とは、何らかの原因により精子をつくる機能が低下している状態を言います。
全く精子が見つからない無精子症から、わずかではあるが精子を認める乏精子症、精子はある程度存在しているが、十分に動いていない場合や、形態が異常なものまで精子の状態は様々です。
造成機能障害が起こる原因で多いのが精索静脈瘤で35%前後と言われ、半数近くは原因不明と言われています。
それ以外の原因としては
・ホルモン異常
・停留精巣
・耳下腺炎症性精巣炎
・染色体異常
・抗がん剤治療等
があげられます。
特に自覚症状はなく、精液検査をキッカケに気が付くことがほとんどです。
精索静脈瘤やホルモン異常は治療によって改善の可能性もありますが、多くの場合は体外受精や顕微授精を行うことになります。
ただしこれらの方法で受精したとしても、精子のDNAに損傷があると、妊娠・出産に影響を及ぼすことが最近になって広く知られるようになってきました
精路通過障害とは
精路通過障害とは何らかの原因によって、精子が通る道が塞がっている、狭くなっている状態を言います。
原因としては
・先天的な発育不全
・精管欠損症
・両側精巣上体炎
・医原性(ヘルニアの手術等によるもの)
こちらも自覚症状はほとんどありません。
治療方法としては精路再建手術がありますが、パートナーの年齢なども考慮して医師相談しながら最終的には判断することになります。
場合によっては、精巣精子採取術で精巣内から直接精子を採取して顕微授精を行う場合もあります。
性機能障害とは
性交渉が上手く出来ない状況を指します。
原因としては
・ED
・神経因性射精障害(脊椎損傷など)
・逆行性射精
・膣内射精障害
・ストレスによる射精障害
などがあります。
原因によって治療方法が変わってきますが、性交渉による自然妊娠が必ずではない場合は、体外受精や顕微授精を選択する方法もあります。
当事者カップルや若い世代だけはなく、社会全体への知識や情報の啓発が必要
どうしても「妊娠」のはなしになると、女性の問題だと思われがちであり、男性が検査や治療に消極的という話もよく耳にします。
当事者より上の世代(既に生殖年齢が終わっている世代)が知識や情報不足のため、誤った発言により、傷つき・困惑しているような話を伺う事もあります。
ただこの記事に書いたように、不妊の原因割合は、半分半分であり、男性側にも様々な原因がみつかることがあります。
また「不妊の原因は男女ともにあり、不妊治療はカップルで共に向き合うものである」という認識は、働きながら不妊治療を続けるカップルが増えている今、益々重要なものになってくるでしょう。
不妊治療と仕事の両立支援は決して「女性」だけのものではありません。男性にも必要な制度なのです。
これらの理解促進を勧めるためにも、まずは妊娠・不妊治療に関する基本的な知識や情報を社会全体に啓発していくことが必要なのではないかと思います。
参考資料:日本生殖医学会HP
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