【不妊治療と仕事の両立】 不妊治療のために仕事を休職する場合の目安となる期間は?
仕事をしながら、不妊治療のために通院するのはかなり大変です。
不妊治療を専門的に診てくれるクリニックが近くにあれば、在宅ワークやフレックス・時短制度などを活用しながら、なんとか仕事と治療を両立させている人もいるでしょう。
ただ、全ての人が、在宅ワークやフレックス・時短制度で不妊治療と仕事の両立がカバーできるわけではありません。
通院と病院受診に2時間、3時間かかる場合は、地域や職種によっては不妊治療休職が必要になることもあります。しかし、この不妊治療休職、いったいどれぐらいの期間で取得すれば良いのでしょうか?
申請する当事者も、制度を提供する企業側も悩む点です。この記事では様々な視点から、不妊治療休職に必要な期間について考えていきたいと思います。
不妊治療の休職期間が定めにくい理由とは?
最初に、なぜ不妊治療の休職期間が決めにくいのかを説明します。
① 不妊治療は非常に個人差の大きな治療
1回の体外受精、2ヶ月ほどの治療で妊娠する人もいれば、2年、3年と体外受精を続けても妊娠に至らない人と、不妊治療は非常に個人差の大きな治療です。
また、年齢が若い方が一般的には妊娠しやすいと思われていますが、これもすべての人に当てはまるわけではありません。20代後半、30代前半もなかなか妊娠せずに何年も治療を続けている人もいます。
いつ妊娠できるか、当事者も医療者もわからないのが不妊治療なのです。
② 治療と仕事の両立が困難になるタイミングは人によって違う
必ずしもすべての人が体外受精にステップアップしてから、治療と仕事の両立に悩むわけではありません。
排卵障害があれば、タイミング治療や人工授精の段階から通院頻度は増え、仕事との両立は難しくなる人もいます。
とはいえ、排卵障害以外に不妊の原因が特に検査では見つからず、また20代、30代前半等であれば、クリニック側も半年から1年ほどは、排卵誘発剤を使用しながら、タイミング治療や人工授精で様子を見、その後に体外受精にステップアップする場合もあります。
この場合、不妊治療期間は2年以上になる場合も少なくありません。
タイミング治療や人工授精のタイミングから不妊治療と仕事の両立の難しさを感じる人、体外受精にステップアップしてから感じる人、近くのクリニックから遠方のクリニックのクリニックに転院してから感じる人と、不妊治療と仕事の両立が困難になるタイミングや期間も人それぞれなのです。
また中には不妊治療を続けていく中で、物理的な仕事との両立には問題はなくても、メンタル的な不調を伴い休職が必要になる人もいます。
このように不妊治療休職を求める期間は人によって様々です。
③ 治療終結の形は様々
「不妊治療はゴールの見えないトンネルを走る続けるもの」と表現されることがあるように、治療の終わり方は千差万別です。
もちろん「妊娠・出産」という形で終われるのが一番なのですが、必ずしもそうとは限りません。そのため、期間を決めて走りきる人もいれば、5年、10年と治療を続ける人もいます。
また治療の続け方も様々であり、出来る限り仕事優先のスタイルで続ける人(通いやすいクリニックに転院やステップダウン)もいれば、治療優先の人もいます。
そのためどうしても会社に求める支援が変わってくるのです。
当事者側の希望と会社側の希望は違う
会社側が不妊治療休職や不妊治療と仕事の両立支援の制度を考える際に、当事者と会社側、双方が100%納得する形での制度設計は非常に困難です。
当事者としては、自分自身が納得がいくまで不妊治療を続けたいと思うでしょうし、会社側としては期限を決めずに無期限でサポートというのは、人員的な問題もあってなかなか難しいのが現状です。
また終わりのないサポートは、サポートに回る側の人からも不満が出る可能性があります。
もちろん、出来る限り本人が納得いく期間、会社側からのサポートがあるのが理想ですが、なかなかそうはいきません。
だからこそ、お互いが納得いくところを見つける必要があります。また職種にもよりますが、在宅ワークやフレックス制度など柔軟な働き方も双方で考えていく必要があります。
最初から休職前提で考えない 通院頻度にあわせた判断を
不妊治療中の通院が大きな負担になるのは限られた期間になります。
①タイミング治療・人工授精の場合
月経5日目頃から排卵日前後までの10日前後
②体外受精・新鮮胚移植の場合
胚移植後は少し通院回数が減りますが、妊娠判定まで頻繁な通院が必要
(採卵後は少し通院スケジュールが立てやすくなります)
③体外受精・凍結胚移植の場合
2周期に渡って通院が必要。
ただし、頻繁な通院が必要なのは月経開始から採卵または移植の時期までの2週間
治療内容や個々の状況によっても通院頻度は様々です。
休職を選択しても、その後有給休暇やフレックス制度、在宅勤務などが可能であれば、わざわざ休職までは必要なかったと感じることもあるかもしれません。
休職を選択するのは最後の手段とし、まずは休暇等を使いながら不妊検査を行い、医師に治療計画を立ててもらいましょう。
その治療計画を見て、やはり休職しないと治療は難しいと思った時点で、休職に向けて動き出すことをお勧めします。職場によってはすぐに休職出来ない場合もあるでしょう。そのような場合は、事前に休職も前提に不妊治療を考えていると伝えておくようにしましょう。
ただし、メンタル的に厳しい場合は、無理をして仕事と不妊治療の両立を模索するのではなく、まずは心療内科に相談して休むことも考えてください
休職期間の目安
では最後に実際に休職する場合の期間の目安です。この期間は個人差が大きいため、あくまでもひとつの目安として考えてください。
①休職期間 3ヶ月の場合 短い
必ずしも月経は月の始めに来るものではありません。そのため、3ヶ月の休職では仮にスムーズに治療が進んでも採卵をして移植をするとなると、1回、よくて2回程度が限界です。
採卵の状況によっては1回も移植出来ないまま休職期間が終わってしまう場合も出てきます
②休職期間 2年以上 長すぎる
確かに当事者にとっては、支援期間が長い方がありがたいのは事実です。しかしよほどの理解がなければ2年以上の休職期間は、会社にとってもサポートする同僚たちにとっても長すぎると感じてしまいます。
③最大休職期間 1年半前後
現在、保険で不妊治療が受けられる回数は移植6回までになっています。
治療の進み方や移植できる胚が得られる割合は、個々で大きな差がありますが、2ヶ月~3ヶ月に1回移植が出来ると仮定すると、休職期間の最大は1年半前後が妥当なのかなと思います。
ただ1年半は長すぎるという考えもあるでしょう。その場合は、社会保険が保証する1年をマックスにするのもひとつかと思います。
またあらかじめ、妊娠判定後の復職のルールなども決めておく必要があります。
最後に
不妊治療は非常に個人差の大きな治療です。
30代前半と30代後半では、妊娠率だけではなく、移植できる胚が育つまでの時間も変わってくるため、どうしても治療期間に差が生まれます。また個人の価値観や考えによっても治療期間が変わってくるのも他の治療との大きな違いかもしれません。
そのため不妊治療の休職期間も一律には決めにくいという問題があります。とはいえ、3年も5年も妊娠するまで支援するのも難しいでしょう
不妊治療と仕事の両立支援の場合、最初に制度を固めてしまうのではなく、その時、その時に応じてどのような制度があれば両立しやすいのか?双方が模索しながら、コミュニケーションを取りながら進めていくことが、まずは必要なのではないかと思います。
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