【男性不妊】クリニックや病院以外で精液検査は可能か?

男性・女性共に不妊の原因は半分半分である。
これはここ数年でかなり一般的に認知されてきた内容です。

男性不妊 割合

*WHOのデータを元に作成

その為、不妊クリニックを受診する際は女性だけが受診して検査を受けるのではなく、男女で一緒に検査を受けましょうとようやくここ数年言われるようになってきました。
とはいえ、まだまだ男性にとって精液検査や不妊治療クリニックは敷居が高いようで、検査に抵抗を示す男性も少なくないと聞きます。

そこで話題にあがるのが、「健康診断での精子チェック」と「セルフキット」です。

 

精液検査は通常の健康診断で可能か?

以前、とあるテレビ番組の放送の終わりかけに、「精液検査が健康診断で受けられるようになったらもっと男性も気軽に検査が受けられるようになるのに」という発言があったのですが、残念ながら通常の健康診断で精液検査を項目として追加するのは非常に難しいのです。

これは私自身が健診機関で健康診断を担当していた経験や、男性不妊の検査を担当していた経験からの判断ですが、多分、現場と検査方法を知っている人はほぼ「無理だろう」と判断すると思います。

不妊治療や不妊検査でご主人の精液を運搬されたことのある方はご存知かもしれませんが、「採取後2時間以内に、温度も人肌(20℃~30℃)ぐらいの温度で持ってきてください」と言われたと思うのです。
精液検査を正しくするためにはこの採取時間と保管温度がとても大切になってきます。

実際日本生殖医学会のHPでも

病院で取るのが望ましいのですが、20℃から30℃程度に保持することが出来れば、自宅で採取して2時間以内に検査すればほぼ病院で採取した場合と同様の結果が得られることが多いと言われています。

と記載されています。

企業健診や市町村健診などの場合、自宅で採取、検査センターに持ち帰って検査という流れになる為、どうしても採取してから検査までに時間がかかってしまいます。
検体だけ先に回収に来たとしても…やはり現実的な方法では残念ながらないのです。

ただ、病院やクリニックで健康診断を受けている場合には、測定機器があるか、検査できるスタッフがいれば可能な検査にはなります。
いつか泌尿器科や不妊科のある総合病院等の健康診断や人間ドックの検査項目のオプションとして追加されればとは思います。

ちなみに「レディースチェック」「メンズチェック」という名前でもっと妊孕性の検査が健診の一環として手軽に受診できるようになればとは思います。
男女とも自分の生殖能力や妊孕力に意識を向ける事は非常に大切な事です。

「多分自分たちは大丈夫…」この思いが、検査や治療を受けるタイミングを逃している要因の一つだったりします。
不妊の要因を自分たちが持ち合わせている事に早めに気づいて、動き出す事も「不妊」を必要以上に長引かせない為には大切なポイントになってきます。

 

キットによるセルフチェックはどこまで有効?

さて、最近話題なのが自宅で手軽に精液検査が出来るというキットとスマホアプリです。
最近は何社かから販売されているようです。

ドラックストアなどに行くと販売されていますしネットでも購入が可能です。
たまたまある妊活イベントで展示をされていて実際にどのように見えるのかを見せて頂きました。
実は、想像していた以上に鮮明に見えた事に驚きを隠せませんでした。
正直、もっとぼんやりとしたものかな?と思っていたのです。

運動率と精子濃度に関してはアプリが解析してくれるものもあり、自分で判断する必要はありません。

となると…キットの検査だけで充分??なんて思われがちですが、残念ながら病院で受ける精液検査の項目には他の項目もあります。

精液量 1.5ml以上
精子濃度 1500万/ml以上
総精子数 3900万/射精以上
前進運動率 32%以上
総運動率 40%以上
正常精子形態率(厳密な検査法で) 4%以上
白血球数 100万/ml未満

(WHOラボマニュアル-ヒト精液検査と手技-5版より)
*一般社団法人日本生殖医療学会より参照

また検査方法も必要な前処理を行ってから血球計算版を用いてカウントする事や、運動率は400倍で測定するなど細かく定められています。
またクリニックによっては自動測定器を導入しており、さらに追加で様々な項目を測定してくれる機械もあります。

キットによるセルフチェックでは精液検査の全ての項目を網羅していないことはあらかじめ知っておく必要があります。

 

射精出来ていても精子がいるわけではない

男性の場合、射精できていれば大丈夫、精液が出ていれば大丈夫と誤解されやすいのですが、問題なく性行為が行えていても精液の中にほとんど精子がいない、いてもほとんど動いていない、正常形態の物がみつからない・・・なんて事もあり得るのです。

妊活を始めた段階、まだ夫婦でクリニック受診を考えていない・・・そんな段階であればセルフキットを有効に活用することも一つの手段です。
これから妊活をはじめよう・・・そんな夫婦に賢くつかって頂きたいと思います。
しかし、あくまでもキットはセルフチェック用であり、検査や健診の代わりに置き換えること出来ないということも頭の片隅においておくことも必要です。

ただ最近はデータを送付してオンラインで医師の診療が受けられるサービスも始まっているようですし、近くに男性不妊専門のクリニックが無い場合やクリニックに行く前に医師の話を聞いてみたいという方は利用されてみてはと思います。

敷居が高いと思われがちの男性不妊検査。
このようなツールをうまく利用して少しでも敷居が下がればと思います。

ただし、あくまでもセルフキットはセルフキット
半年から1年ぐらい妊活を続けても妊娠に至らない場合は、病院で検査を受けることをお勧めします。

 

 

 

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