不妊治療保険適用④ 精液検査・男性不妊への対応はどう変わった?

不妊治療保険適用男性不妊

令和4年4月からスタートされた不妊治療の保険適用。

精液検査を始め、男性不妊はどのように変わったのでしょうか?
保険診療で出来ること、出来ない事を中心に、あえて保険診療外で行っている検査や治療についても解説していきます。

*この記事は2022年8月01日版の厚生労働省の資料を基に作成しています。

 

記事の内容
・保険診療が可能な項目とその詳細
・保険診療外の項目
・注意!!選ぶ術式やクリニックよっては保険診療外になることも
・男性の受診が原則必須となった
・精液検査で問題を指摘された場合 体外受精の前に男性不妊専門医を受診しよう

 

保険診療が可能な項目とその詳細

精液検査やそれらに伴う詳細な検査の一部は、令和4年4月以前から実は保険診療で行われていました。

そのため精液検査に関しては、特にアナウンスもなく以前と変わらず4月以降も継続して保険診療で行っているクリニックも多くあります。ただ一部のクリニックでは精液検査を自費診療で行っているところもありますので、ホームページ等で確認してから受診するようにしましょう。

 

以前から保険診療が可能だった項目

・精液一般検査(精液の量、顕微鏡による精子の数、奇形の有無、運動能等を含む)
70点(210円)

・男性不妊外来における血液検査、超音波検査

・顕微鏡下精索静脈瘤低位結紮術(片側 両側ともに 2018年4月より)
片側 ¥37,500(3割負担金額)
両側 ¥75,000(3割負担金額)

 

新しく保険診療が可能になった項目

・Y染色体微小欠失検査 3,770点(¥11,310)(患者1人につき1回)
*以下の条件有
不妊症の患者であって、生殖補助医療を実施しているものに対して、PCR-rSSO法により、精巣内精子採取術の適応の判断を目的として実施した場合

・精巣内精子採取術(TESE)
1 単純なもの 12,400点 (¥37,200)
2 顕微鏡を用いたもの 24,600点(¥73,800)(MDTESE)

・ED治療薬(ただし一定の条件を満たす必要がある)
処方される患者またはそのパートナーのどちらかが、服用から遡り6か月以内に、一般不妊治療管理料や生殖補助医療管理料に係る医学的管理を受けている必要がある

 

保険診療外の項目

・精子DFI検査(DNA損傷検査等クリニックによって名称はかわる)
・抗酸化能試験(こちらもクリニックによって若干名称が変わります)
・精子凍結保管費用

 

注意!!選ぶ術式やクリニックよっては保険診療外になることも

実は男性不妊に関わる検査や診療でまったく保険診療がきかないものはさほど多くありません。

2022年の不妊治療が保険適用される前から、精液検査や精索静脈瘤の手術やそれらに関わる検査など多くの項目が保険適用で行うことが出来ました。

 

精液検査は保険診療外が一般的?

都市部のクリニックでは、精液の一般検査などは保険診療外として取り扱い、今後も保険診療外で取り扱うクリニックが多いように感じます。

保険診療外で精液検査を行っているクリニックは、精子運動解析システムを使用していることが多いため、通常の精液検査より細かな精子の分析が出来るというメリットはあります(ただそのメリットがどこまで一般不妊治療や人工授精にいかせているのかは考える必要がありますが…)

精液検査が保険診療かそうでないかは、クリニック選びに大きく影響することはそこまでないのではないかと考えています。

それよりは、生殖医療専門医がいるか?治療や検査の選択肢はあるか?保険診療である程度の治療が可能か?などを基準にクリニックを選ぶことをお勧めします。

 

精索静脈瘤の手術は術式によっては自由診療になることも

精索静脈瘤の手術は2018年の保険適用後以降、多くのクリニックでは保険診療で受けることが出来ます。ただ一部特殊なメソッドを扱うクリニックに関しては、自由診療になります。

またクリニックによっては、保険診療を行わずすべてを自由診療で行っているクリニックもあります。

必ずしも自由診療の方がより良い治療方法とは限りません。本当に自由診療でないと受けられないのか?を考えたうえで、自由診療の治療方針の方がメリットが大きいと思えば、自由診療での治療を選ぶのも一つかと思います。

金額的にも大きく変わってくるため、慎重に判断する必要があります。

 

 

男性の受診が原則必須となった

令和4年4月からの不妊治療保険適用に伴い、6ヶ月ごとに治療計画を作成し、当該患者およびそのパートナーに説明・同意を得なければなりません。

そのため、治療計画作成時には必ず2人で受診する必要があります。

今まであれば、病院は女性任せという男性も少なくありませんでした。タイミング治療の段階であれば、精液検査すら受けない男性もいました。

しかし、令和4年4月以降からは、2人で受診して説明を聞く必要があります。もちろん、そのタイミングで必ず精液検査も受けるようにしてください。

この点に関しては、男性の検査と2人で受診することを促すいい機会になったと思う反面、男性が受診を拒否することで、タイミング治療さえスタート出来ないカップルが出てこないことを願うばかりです。

 

 

精液検査で問題を指摘された場合 体外受精の前に男性不妊専門医を受診しよう

最後に、保険適用とは直接関係ありませんが、精液検査で数や運動率、精子の形態を指摘された場合は、体外受精にステップアップする前に、必ず男性不妊の専門医を受診するようにしましょう。

確かに保険適用になったことで、体外受精の金銭的なハードルは以前よりかなり下がりました。
そのため、精子に問題があるのであれば、タイミング治療や人工授精するより、少しでも早い段階で体外受精にステップアップしてしまおうというカップルもいるでしょう。

確かに、早い段階で体外受精にステップアップしてしまった方が妊娠率も上がるような気がするかもしれません。

しかし、精索静脈瘤が原因の男性不妊であれば、まず精索静脈瘤の治療優先してください。
精索静脈瘤の手術をすることで、精子の状態が改善されれば自然妊娠の可能性もありますし、体外受精をした場合でも妊娠率に違いが出てきます。

保険診療が可能な6回の移植を終えた後で、男性不妊専門医を受診し精索静脈瘤がみつかり手術をしても、その後の体外受精はすべて自費診療になってしまいます。

出来る検査や治療をしてから体外受精に望む方が結果的に、治療にかかる費用も押さえられ、妊娠への近道になることも少なくありません

 

 

いかがでしたでしょうか?

男性不妊は令和4年4月以前から保険適用だったもののも多く、新たに保険適用になった項目(Y染色体微小欠失検査・精巣内精子採取術・ED治療薬)が少なかったこともあり、あまり話題に上がることがありませんでした。

ただ不妊の原因の約半分は男性側にあると言われています。不妊は決して女性だけの原因ではありません。治療をするという選択をしたのであれば、女性に任せきりにならずに、2人で一緒に検査や治療を進めていってほしいなと思います。

 

参考情報
厚生労働省HP
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kodomo/kodomo_kosodate/boshi-hoken/funin-01.html

指定医療機関
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000047346.html

 

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