【妊活・不妊問題】 不妊治療を取り巻く様々な格差問題 地域格差が生む問題点とは

2023年6月27日 追記・編集

不妊治療を取り巻く環境には様々な格差問題があります。

・経済格差
・治療格差
・情報格差
・職場理解の格差

そして、今回記事のテーマに取り上げた「地域格差」です。

もちろんこれらの格差問題は他の医療でも起こりうることであり決して不妊治療だけに関したことではありません。

ただ、他の医療の場合は横のつながりがあります。
自県の病院で手術が難しければ、他県の病院を紹介してもらう事も可能です。
手術だけ他県の病院で行い、その後の経過観察は近隣の病院に通うことになります。

時折、手術をしてもらった病院への受診が必要になることもありますが、それも年に数回のレベルであり事前に予約をしているので調整もしやすかったりします。

しかし、不妊治療はそうはいきません。
多くの場合、ほとんど横のつながりがないからです。

例えば、採卵・移植は都市部の技術の高いクリニック、注射や卵胞の成長確認は近くの病院で遠隔で技術の高いクリニックにつなぎながら…なんてことは今の段階では実現されていません。

すべて一つのクリニックに通い続けなければいけないのが現状なのです。
その為、治療費以外にも通院にかかる交通費や時間など負担は増すばかりです。

以前、この地域格差是正に、地方に一つ(中国地方 四国地方 などの単位で)技術や設備を集約したクリニックをという医療者の投稿を見かけましたが、正直地域範囲が広すぎます。
交通の便利な地域はよいですが、そうでなければ移動を考えただけでもかなりの重労働です。

それよりも横のつながりがを強化して、逐一遠方に通わなくて済むような医療体制の構築を願いたい。

ようやく地方ではそのような動きもみられるようになってきましたが、正直まだまだなのが現状です。

あまり語られることの少ない、不妊治療の地域格差。
地域格差があることでどのような問題が発生するのか?当事者は何に気を付ければよいのかを記載していきます。

 

不妊治療の地域格差から生じる問題① クリニックが選べない

 

厚生労働省の指定医療機関を見てもらうとわかるのですが、クリニックの数が都市部と地方で大きく違います。
例えば、東京都だと100件近いクリニックが一覧にあがってきます。
近郊の都市部や大阪などでも30件前後のクリニックが登録されています。

しかし地方に行くと、登録されている医療機関は数件レベルになり、県庁所在地に集中している県も少なくありません。

地図上にクリニックをマッピングしていったらかなり偏ったものになるに違いないと全国のクリニックの所在地をみながら感じた事があります。

こうなると、家から近い、職場から通いやすいでクリニックを選ぶと、選べるクリニックがないということも少なくありません。
そのクリニックが技術的に非常に高く、常に新しい知見を入手しているようなクリニックであればよいのですが、そういうクリニックはなかなかないのが現状です。

とはいえ、多くの人は通いやすさを優先して、近くのクリニックに通うことになるでしょう。

そもそもこれから不妊治療を始めようという人が、クリニックよってここまで治療方針が違うということはほとんどの場合は知りません。
というか、それを知ってクリニックを自分で見極めて選びなさいという事がそもそもおかしいのです。

医師がいる、病院と看板をあげている、不妊治療を謳っている・・・
多くの人はこの状況を見れば、医師の腕の違いは多少あるものの、治療内容にそんなに大きな差はないはずと思ってしまいます。

地方の場合、最初の段階でのクリニック選びはそこまで頭を悩ますことはありません。
なぜなら、先ほどから述べているように選べるほどクリニックがないからです。
ただ、この先からが難しい・・・

色々と調べていき、都市部のクリニックの情報を色々と聞くにつれて、本当にこのまま今の病院で治療を続けていても大丈夫なのだろうか?という不安に陥ることがあります。

しかし通える範囲に転院するクリニックが見当たらないのです。
その結果、治療そのものを諦めてしまう人や、そこのクリニックで同じ治療を繰り返してしまう人も少なくありません。

思い切って都市部のクリニックに転院することも可能ですが、そのためには時間とお金が必要になってきます。

都市部では当たり前に受けられる治療が、地方では受けることが出来ない・・・そんな現状が地方にはあるのです。

クリニックが少ない地域で不妊治療をスタートする人はまずはこの現状を把握しておく必要があります。

 

不妊治療の地域格差から生じる問題② 不妊治療と仕事の両立の難しさ

 

仕事をしながら通えるクリニックが一つしかない。
しかし、ここでは治療技術が心もとない。
もう少し、治療技術の高いクリニックへ転院したいと思った時に出てくる次の問題が、「不妊治療と仕事の両立」です。

今まではなんとか定時退社や1時間の遅刻早退で通院のやりくりをしてきた人でも、遠方のクリニックに通うとなるとそうはいかなくなります。

場合によってはクリニックの通院だけで、片道2時間以上かかるなんてことも出てくるでしょう。
往復で4時間、ここに診療の待ち時間などを入れるとクリニックの通院だけで1日が終わってしまいます。
もちろん、遅刻や早退、時間有給でまかなえるレベルではありません。

これが月に1回程度であればなんとかなるかもしれません。
しかし、不妊治療の通院は複数回、それも突然やってきます。

そして治療には終わりがみえません。
いつまでこの突然が続くかわからないのです。
それゆえに、仕事の調整も難しくなってきます。

30分から1時間圏内にクリニックがあれば、治療と仕事の両立にここまで頭を悩ます必要はなかったのに・・・と思う人もいるでしょう。

不妊治療と仕事の両立に関しては、企業にも休暇や休職制度の構築を望みますが、それと伴に治療環境の地域格差の問題にも国が目を向けてほしいと願います。
企業にしてみれば、なぜ近くのクリニックではダメなのか?そう感じる人もいるのではないかと思います。

不妊治療をしながら働くうえでこのような治療格差や地域格差が大きなハードルになっていることも知ってもらえればと思います。

仕事終わりに安心して通院できるクリニックがあれば、ここまで治療と仕事の両立に頭を悩まさなくても済むのではないかと思うのです。

 

 

不妊治療の地域格差から生じる問題③ 治療の長期化と高齢化

 

転院を考えるにも、結局時間やお金の問題から転院を諦めて、今までのクリニックで同じ治療を延々と繰り返している人もいます。

不妊治療の高齢化が問題の一つとして取り上げられることがありますが、不妊治療の高齢化にはこのような背景もあるのではないかと感じています。
休み、休み、近くのクリニックで高度生殖医療と人工授精やタイミング法を繰り返し、気づけば40歳手前になっていた・・・という人もいるのではないでしょうか?

そしてようやく都市部へのクリニックに転院をする。
結果、治療の長期化と高齢化が進むことになります。

都市部のクリニックに高齢の患者さんが多いというのにはそのような背景もあるのではないかと思います。

しかし、これって当事者自身の責任なのでしょうか?
自分で調べて、早い段階で都市部の治療技術の高いクリニックしなかった患者に問題があるのでしょうか?

そもそもは、治療技術の地域格差が生んだ結果ではないかと思うのです。
クリニック同士、横の連携があれば、他院への紹介システムがあれば、患者は一つのクリニックに留まり続けることはそこまでないでしょう。

医師が紹介書を書き、背中を押せば次のステップへと進む人もいるでしょう。
逆を言えば、医師が何も言わなければ患者はこのクリニックでいつか妊娠できるのだと信じているのです。

確かに地方から都市部への転院は時間や費用の問題もあり簡単な事ではありません。
それでも医師から転院を提案されれば、一つの区切りとして考える患者もいるかもしれません。
期間を決めて都市部へ通院する患者もいるでしょう。

地方では十分な治療を受けることが出来るクリニックが少ない
これもまた、治療の長期化と高齢化に拍車をかけている要因の一つではないかと思うのです。

 

なかなか問題視されにくい不妊治療の地域格差ですが、経済的問題に対して保険適用されえた今、次はどの地域に住んでいても当事者が望む治療が受けられる環境になってほしいと願ってやみません。

と同時に、現在治療中の方、これから治療をされる方にはこのような地域格差がある事も頭に入れて、今後の治療の進め方を考えて行っていただければと思います。

 

 

 

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