【妊活・不妊問題】 妊娠や不妊に関することは女性だけの課題ではない

妊娠・不妊の話になると、なぜか男性が透明化し女性だけの問題にされがちです。

女性が産まないから…少子化が進んでいくなんて発言も度々繰り返され問題視されています。

それ以外にもワンオペ育児の問題、産後鬱の問題、子育て世代への冷たい社会的視線…
多くが残念ながら「母親(女性)の責任と努力不足」のような扱いを受けているのが現状です。

なぜこれらの問題解決が進展しないのか?
それは日本社会の考え方の根底に「妊娠・出産は女性だけが担うもの」という「性的役割」的な考え方が根強く残っているからではないかと私は思います。
そしてそれらは「不妊」の問題を考える上でも大きな影響を与えているように感じています。

妊娠・出産を女性だけの課題、女性が努力するべき…と言っている間は、少子化の問題含め何も解決しないのではないかと思います。

 

1 不妊は女性だけの問題ではない

不妊の原因の48%は男性にもある。
精子も年齢と共に衰えていく

このことがテレビや雑誌等で取り上げられるようになり、「男性不妊」についてもかなり一般的になってきました。

しかし、テレビで大々的に取り上げられるのは「無精子症」などの事例が多く、まだまだ多くの男性においては「無精子症」や「乏精子症」は「他人事」であることが多く自分事に置き換えた時に、不妊は自分には関係ないと思っている人も少なくないのではないかと感じる事も…

あくまでも「不妊」は女性の問題。
女性が出産を先延ばしにするから「不妊」が問題視されるだけ…
男性には問題はない。女性に問題があるのだ…

このような考えを聞いたり、見かけたりすることも少なくありません。

また、不妊治療と仕事の両立支援についても「女性の為の制度」と思っている人が、企業や行政においても少なくありません。
確かに通院回数は圧倒的に女性の方が多いです。
仕事に影響を及ぼすのも女性の方が多いでしょう。

しかし検査を受ける時は男女一緒の受診が望ましいです。
遠方のクリニックであれば人工授精や体外受精の際は精子を運ぶことが時間的に難しくなるので、男性も一緒の通院が必要になります。
それ以外にも男性側に原因があった場合は、それらの治療の為に男性の通院も必要です。
その時に男性にも「不妊治療のための休暇」が必要になってくるのです。

 

不妊の原因の半数は男性にあるという事は広く知られるようになりましたが、もう1歩先に言及する人は多くありません。

「不妊」というと、不妊治療以外に女性の「食生活」や「生活習慣の見直し」、効果があるなしは別として…「冷え対策」や「睡眠時間」などに言及するものは多く見かけますが、男性のそれらに関して述べられているものはあまりみかけません。

たばこはもちろんの事、会社でのストレス、食生活なども精子に影響を与えます。
特に健康診断で、コレステロール値や中性脂肪の値、血糖値、血圧などを指摘されている場合はそれらも妊活に影響してくる項目だと言われ改善が必要になってきます。

男性不妊に関しては様々なことがわかりつつあります。
それでもなぜか?「女性の問題」にしておきたい…そんな空気を感じる事が多々あります。

「女性の問題」は「女性自身が個人で解決すべき」そういう風潮が少なからず残る今、決して「女性だけの問題でない不妊の問題」を「女性の問題」にしておく方が社会的には楽なのかもしれません…

「なぜ?女性の為だけに行政や企業が仕組みをつくる必要があるのか?」不妊治療と仕事の両立の問題に関してこのように言われる方も実は少なくないのです。

確かに出産するのは女性ですが…「妊娠・不妊」は決して女性だけの問題ではありません。

 

2 知識があるのと実践しているは違う

不妊にまつわる様々な問題の話をすると、そんな事は既に知っているという反応をされる方もいらっしゃいます。
しかし、「知っている」と「実践できている」は大きく違います。
知っていても、それに伴う何かを実践していなればなんの役にも立たないのです。

「知っているけど…それらにまつわる問題解決には今は(今後も)取り組む予定はない」
それが本音のところなのでしょう…

「だから自分たちでなんとか解決してね」と繋がるのかもしれません。

また、「女性の問題(そもそも不妊は女性だけの問題ではありませんが)になぜ自分たちが取り組まなければいけないのか?」というのが根本にあるのかもしれません。

「妊娠・出産は女性の問題」という「性的役割」的な考えが根底にある以上、どれだけ知識や情報を普及しても動くべきところは動かないのではないかと残念ながら感じる事があります。

ただ、少しずつですがこの社会にはびこる「妊娠・出産は女性の問題」という考えに違和感を覚え声を上げ出している人達がいます。
まだまだ一部での出来事かもしれませんが、これがそのうち大きな流れになるのではないかと思います。

その時にこの「不妊治療と仕事の両立」の問題に真摯に向き合い取り組んだ会社と「女性の問題と責任」として積極的に取り組まなかった会社で差が出てくるのではないかと思います。

 

3 「性的役割」は個々の思想の問題だけではない

実はこの「性的役割」という思考について色々と考えた時に感じたのが、決して個々の問題ではないという事でした。
自分はそんなこと思っていない、考えていないと思っている人は本当にそうなのでしょうか?
知らず知らずのうちに「性的役割」で物事を考えていないでしょうか?

・男性は社会で働き、女性は家庭で子育てをする
・女性は家事や育児があるから責任ある仕事は男性にしか任せられない
・高齢出産は女性の社会進出が原因だ
・子供が出来ないのは女性の身体に問題があるからだ

お盆休みや年末年始になると帰省の問題も取り上げられますよね。
男性は休みを堪能できるが、女性は帰省先でも家事、炊事に振り回され休んだ気にならないとか…
全てではないでしょうが、このような経験をされている方もいるのではないでしょうか?

知らず知らずのうちに「性的役割」的な思考に私達は左右されてしまっているのです。

そしてこの思考は生まれ育った地域や家庭、強いては両親が働いていた会社の風土などによっても違います。

以前、プライベートで食事を一緒にした女性がこの「性的役割」な思考が強い方で驚いた事があります。
きっと長年働いてこられた企業の風土なんだろうなと…

不妊の問題に関しても「うちの嫁がね…」と一方的に女性側の責任にされている話を耳にすることも少なくありません。
しかし蓋をあけると「実は…」なんて事も結構あるのです。

会社勤めしていても「女が男みたいに働いているから子供が出来ないんだ…」なんて言われる事もしばしば…

ただ、これらの発言をする人に誰かを貶めたい「悪意」があるわけではありません。
ただ、これが一般的、これが普通と思って発言しているのです。

育児系のコラムを読んでいても「母親が…母親が…」とまったく父親が出てこないのもきっと無意識なんだと思います。

 

4 まとめ

明らかな・目だった男尊女卑の問題は徐々に社会から無くなりつつあります。

以前は当たり前に行われていた掃除、お茶くみ、電話番は女性だけの仕事ではなくなりました。
女性は結婚したら寿退社も一般的ではなくなり、産休・育休の制度も運用されるようになってきました。
男性は社会で女性は専業主婦をという感覚も少なくなり、共働きの家庭が増えてきました。

私が小さな頃は神社のお祭りは神聖なもので女性は参加することも立ち入る事を禁止されていました。
もちろんおみこしも振れたことはありません。
地蔵盆もお参りくださる方にお茶やスイカをふるまう炊事要因として高学年が参加するのみでした。

このような風潮は少子化と共に徐々になくなっていき、今は男女が参加する行事に変わっていっています。

しかし、根本的な思考が変わったかと言われると「No」でしょう。
共働きの家庭は増えてきましたが、やはり家事も育児も負担を担うのは女性の方が多い。
もちろんそうではない家庭も増えてはきましたが、まだまだ少数派ではないでしょうか?

このような話をすると「女性ばかりが権利を主張する」と言われますが、決して女性が「特別な権利」を主張しているのではありません。
そもそも男性にはあった権利が女性になかった、もしくは女性ばかりに負担が行く仕組みだったからなのです。
それらの風潮を変えていきたいと「声」に出す人が増えたのです。

「不妊」の問題も、「少子化」の問題も女性だけに頑張りを求める時代はもう既に終わってしまっています。
女性だけに頑張りを求めてもそれらに答える人はどんどん少なくなっていくでしょう。

だからこそ「女性の問題」としてではなく、社会の問題として向き合っていく事が必要なのではないかと思います。