【働く妊活】不妊治療と仕事の両立 仕事を続ける・それとも退職する?

不妊治療を続けていくうえでおおきな壁として立ちはだかるものの一つに「不妊治療と仕事の両立」の問題があります。

2016年に国会等で不妊治療と仕事の両立に関する調査が必要との声があがり、翌年2017年に厚生労働省が初めて不妊治療と仕事の両立の実態や問題点、企業における両立の支援への取り組みの状況を分析・把握するためにアンケートを行いました。

その時の報告書はこちらから ⇒ 不妊治療と仕事の両立に係る諸問題についての総合的調査研究事業 調査結果報告書

この報告では既にご存知の方も多いかもしれないが、仕事と不妊治療の両立ができずに退職した人は16%にのぼり、仕事と不妊治療を両立している人でも、87%の人が両立は難しいと回答し、ほとんどの人が一度は仕事と治療の両立に悩んだという結果が出ています。

あれから3年・・・
少しずつではあるが、不妊治療と仕事の両立を支援しようと言う会社は出てきたように感じます。
しかし、本当にほんのわずかです。
制度をつくりました・・・と話題になった企業もありますが、その後どのように運用され、本当に当事者にとって使いやすい形で運用されているのかは外には見えてきません。

そして相変わらず、当事者からは仕事と治療の両立に悩む声が聞こえてくるのが現状です。

 

不妊治療退職をした当事者としては

私自身は9年前に不妊治療退職を経験した当事者の一人です。
当時はまだまだ妊活にも不妊にも理解は乏しく、簡単に誰かに相談できる雰囲気はありませんでした。
また、当の私もなんとか社内で理解をしてもらって、仕事と治療が両立できるように調整していこうという方向にエネルギーを向ける事が出来ませんでした。

9年経った今でもこれは後悔している事の一つです。
もう少し、会社と上司と交渉してもよかったのではないか?休暇制度、時短制度、時間有給の導入を提案しても良かったのではないか?という思いは今でもあります。
ただ、交渉している間にも私達は年を重ねていく・・・
そして詳細は省きますが、私達夫婦には時間をかけて交渉している時間的猶予が無かったという背景もありました。
とりあえず1日でも早く子供を授かりたい・・・そんな思いでいっぱいだったのです。

それでも退職した事の後悔はその後ずっと引きずる事になります。
当時はどちらかを選ばなきゃ仕方ない・・・
そんな思いで退職を選んだのが、人の気持ちはそんなに単純に割り切れるものではないということを後々痛感します。

今でも思ことがあります。
9年前に、今のような社会の流れがあれば私は「不妊治療退職」を選ばずに済んだのではないかと・・・

だからこそ簡単に不妊治療退職を勧める事は出来ません。
それでもあの時、不妊治療退職を選んだからこそ今の生活があるのではないか?とも思うことがあるのもまた事実なのです。

何が正解だったのか?それは今になっても正直わかりません。

ただ言えるのは、だからこそ1日でもはやく仕事と不妊治療の両立が当たり前になる社会が来てほしいということだけです。

 

仕事を続ける?それとも辞める事を選ぶ?

女性が仕事と治療の両立に悩むタイミングは人それぞれです。

・不妊治療を開始する時
・治療期間が長くなり有給や遅刻早退が増えて来たとき
・遠くのクリニックに転院を考えた時
・ステップアップを考えた時
・治療と仕事の両立につかれた時

なかには会社や周りから、仕事か治療かどちらかにしてと言われた事がある人もいるでしょう。
周りの心無いうわさや配慮にかけた発言に心が苦しくなってしまった人もいるかもしれません。

もう仕事を辞めて、治療に専念したい・・・
そう思う時は何度もあるかと思います。

その反面・・・
・今まで気づきあげてきたキャリアを失いたくない
・金銭的な問題もあって仕事を辞めるわけにはいかない
・一度やめたら同じ職に再就職は難しい

というような思いの中、退職に踏み切れない人もいるでしょう。
それ以外にも、社会で働くこと自体が自分のidentityだと言う人もいるでしょうし、もし治療が上手くいかなかった時のことを考えると、仕事まで失いたくないと言う人もいるかと思います。

だからこそ、単純に不妊治療退職をするかしないかをメリット・デメリットだけで語る事は難しい。
個々の仕事への思いや金銭的な面なども踏まえたうえで考えていかなければならない問題なのです。

 

不妊治療退職のメリット

・遠方のクリニックへの通院が可能になる
・クリニック通院を優先できるので仕事との調整のストレスが軽減できる
・今まで時間の都合で悩んでいたステップアップが可能になる
・仕事のストレスから解放されることで気持ちに余裕が出来る(逆の場合もあるので注意)
・不規則な生活だった場合は規則正しい生活が送れる

不妊治療退職のメリットは何より、通院の為に仕事の調整をしなくて済む事ではないでしょうか?
仕事の調整にストレスを抱え、やきもきしていた人にとっては大きなメリットだと思います。
また、どうしても仕事と治療を両立させようと思うと、食事や睡眠がおざなりになりがち。
その点が気になっていた人にとっては、食や生活習慣が改善出来る事も大きなメリットかもしれません。

実際に私自身も退職後に「ようやくこれで仕事との事を気にしなくても治療に専念できる」と感じました。
毎月、毎月、排卵日前後の仕事のスケジュール(元々残業の多い職種でしたので)を気にしなくてよくなったのはありがたい限りでした。
同僚に残った仕事を託さなくて済むこともストレス軽減の一つでした。

それ以外にもかなり適当だった食事や睡眠も大きく改善されることとなりました。
もちろん食事や睡眠がどこまで「不妊」に影響を及ぼすかは現時点ではわかりません。
でも、あまりにも不規則な生活習慣はやはり改善するに越した事はないと思います。
そして、私の場合は度を越した生活状況だったのもまた事実なのです。

ここまで書くと不妊治療退職にはメリットが大きいように感じますが、もちろんデメリットもあります。

 

不妊治療退職のデメリット

・金銭的な余力がなくなる
・今までのキャリアがリセットされてしまう
・再就職が容易ではない、同条件では難しい
・生活が不妊治療一色になり逆にストレスを感じてしまう事も
・不妊治療が上手くいかなかった時に逃げ場がなくなってしまう

まず大きいなデメリットは金銭面だと思います。
共働きをしていたからこそなんとか捻出出来ていた体外受精費などが難しくなってきます。
人によっては退職して治療に専念したはずなのに、金銭的な問題で体外受精を数回で諦めなければならなくなる人もいるでしょう。

また、不妊治療が上手くいかなかった時に生活が不妊治療一色になっていると逃げ場がなくなります。
仕事を続けていれば、治療をお休みしても「仕事」というものがありますが、仕事を辞めていると治療をお休み期間に何もすることがなく、無力感に苛まされるという話を伺う事もあります。

 

不妊治療退職をしても後悔しないか?

不妊治療と仕事の両立を考える上で、不妊治療退職のメリット・デメリットを比較する事は大切です。
でも、それ以上にまずは「本当に今の仕事を辞めても後悔しないか?」を今一度考えてほしいと思います。
今の日本において、女性が一度仕事を辞めてブランクが出来てしまうと同職種で同じ条件での再就職は難しいのが現状です。
もちろん、運とタイミングもあるだろうし、実力があればなんとかなるという人もいるかもしれませんが・・・
かんたんなものではないという事は頭に入れておく必要があります。

では不妊治療退職をしても後悔しない人とはどんな人なのでしょうか?

・今の仕事や今の仕事の条件にさほどこだわりを持っていない
・もともと妊娠・出産したら退職を視野に入れていた
・他に新しい事にチャレンジしたくいずれは退職を考えていた
・同条件とはいかなくても再就職先がそれなりにある専門職である
・今の仕事はそれなりにやりきったので特に後悔はない

そして何より金銭的な不安が無い事が大前提になってきます。
不妊治療には思っている以上にお金がかかります。
特に第2子、第3子も不妊治療でと考えるとそれなりの費用が掛かる事になります。

逆に・・・
・今の仕事に拘りを持っていてこの仕事を続けていきたい
・一度辞めると同じ職種に就くのは難しい
・仕事が生きがいである
・今より所得を下げたくない

このような場合は、仕事を続けながら不妊治療をする方法をまずは模索することをお勧めします。

 

それでも不妊治療退職を考えているのであれば・・・

私自身は自分の経験からも不妊治療退職に関しては慎重になってほしいといつも思っていますし、ご相談者さんにもそのようにお話しすることが多いです。
とはいえ、やはり仕事と治療の両立は難しいもの・・・
もう、仕事を辞めて不妊治療に専念したいという気持ちもよくわかります。

とはいえ、退職届を出してしまうともう後には引けません。
だからこそ最後にもう一度だけ辞めずに治療と仕事の両立を出来る方法を模索してほしいのです。

 

不妊治療退職する前にチェックしたいポイント

・休職制度や特別休暇制度など何か使える制度はないか?
・時短勤務やテレワークなどは出来ないか?
・部署移動で解決しないか?
・本当に仕事を辞める事に自分は納得しているか?

厚生労働省からは不妊治療連絡カード不妊治療と仕事の両立サポートハンドブックというものが出されています。
これらをうまくつかってまずは、会社と上司と交渉してみてください。
今現在制度がなくても、会社側も当事者の声を待っているという事もあるかもしれません。
企業によっては臨機応変に対応可能という企業もあるかもしれません。
まずは「話をしてみる」それから考えても良いのではないかと思います。

もちろん、残念ながら暖簾に腕押しの企業もあります。
そんな場合は辞める方向で考えなければいけない場合もあります。
それでも、働き続けたいのであれば不妊治療をしながら働ける企業に転職をするというのも一つの選択肢です。
実際にそのような転職支援をしているエージェントもあります。

ただ会社に話をする際に気を付けてほしいのが「契約社員」や「パート勤務」への雇用形態の変更です。
もちろん、双方が納得しての選択であれば良いのですが、業務量や責任はなんら変わらず、雇用形態だけが非正規になってしまったという話も耳にします。
また、その後正規社員に雇用形態が戻るかどうかも曖昧なまま話を進めてしまうのは非常に危険です。

不妊治療退職に迷いがあるのであれば、まずは働き続ける方法を模索してみてください。
退職届を出すのはそれからでも間に合いますから・・・

そして1日でもはやく、産休や育休と同様に不妊治療休暇も当たり前の制度になることを願ってやみません。

 

 

 

 

 

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