卵子凍結をするなら考えておきたい!将来のライフプラン
「卵子凍結をすることによって、妊娠や出産などの焦りから解放されました」こんな話を耳にすることも少なくありません。
しかし本当に「妊娠や出産の焦り」から解放されたのでしょうか?残念ながら決断を少し先延ばしにしたに過ぎないのかもしれません
もちろん、ライフプランの中で妊娠や出産を先送りするという選択肢もありです。ただ、この時の決断は戻ってやりなすことが出来ません。
だからこそ卵子凍結をする時には、しっかりと将来のライフプランを考えたうえで決断してほしいのです。
この記事では、卵子凍結する際に考えてほしいライフプランについて、年齢別の事例を挙げながらお伝えします。
ライフプランで考えておきたい3つのポイント
結婚、妊娠、出産ほど予定通りに進まないものはありませんが、それでも卵子凍結をするのであれば、ある程度はライフプランをイメージしておく必要があります。
特に以下の3点はざっくりでもいいので考えておいてほしい点です。
・子どもは何人望んでいるのか?
・何歳から妊活を始める予定なのか?
・子どもに対する望みはどれぐらいの割合なのか?
卵子凍結時にこの点を考えずに保管個数を決めた場合、5年後・10年後に「あの時、もう少し多めに保管しておけばよかった」と思っても、卵子凍結をした時には戻ることは出来ません。
また、凍結時の年齢とライフプランによっては必ずしもそこまで卵子凍結が必要とはならない場合もあります。
「卵子凍結をしておけば安心」ではなく、自身のライフプランと共に卵子凍結について考えるようにしましょう。
ライフプランについてイメージしやすいようにいくつか例をあげて紹介します
年代別ライフプラン事例
例1) 30歳女性の場合
現状
既に結婚を考えているパートナーあり
ただしお互い後数年は子どもを望んでいないので卵子凍結を検討中
ライフプランの希望
子どもの希望人数は2人
35歳から妊活予定
1人は絶対に欲しいが、2人目に対する割合はわからない
この場合であれば、そもそも35歳から妊活を始めれば自然妊娠もしくはその時点での体外受精での妊娠の可能性も高く、そこまで積極的に卵子凍結を検討しなくてもいいかもしれません。
2人目を考えて卵子凍結をする場合であっても、まずは10個~15程度保管し、35歳以降に追加で卵子凍結を行うかどうか検討するという方法もあります。
ただこのタイミングでAMHだけは測定しておくことをお勧めします。
AMHが極端に低い場合は、卵子凍結もですが、ライフプランを変更して早めに妊活をスタートさせることも視野に入れた方がいいでしょう。
例2)35歳女性
現状
現在パートナーはいない 婚活中
ライフプランの希望
子どもの希望は2人
30代の間に子供1人は授かりたい
子どもを2人望む気持ちはかなり強い
もしかしたら卵子凍結が一番意味を持ってくるのがこのような状況の場合かもしれません。
1人の子どもを90%の確率で授かるのに必要な卵子が35歳の場合は15個前後と言われています。
子どもを2人望んでいることから、理想論としては30個の保管が必要になります。ただし、すでに婚活中であり、パートナーとすぐに巡り合えば、自然妊娠や凍結卵子を使わずに体外受精で子どもを授かる可能性もあります。
まずは15個~20個程度保管し、その後もしパートナーと巡り合っていなければ37歳ぐらいで再度卵子凍結を検討することも可能です。
例3)40歳女性
現状
パートナーはいない 婚活も開始していない
ライフプランの希望
子どもは2人希望
1人は出来ればほしい
妊活はパートナーと出会えたら開始する予定
卵子凍結の個数を決める上で、一番悩むのがこのような場合です。40歳の場合、40個卵子を凍結しても、出産に至る割合は75%程度と言われています。
またこれから婚活を開始して、パートナーに出会ったとしても自然妊娠で授かる可能性はかなり低く、凍結卵子がなかった場合の体外受精での妊娠率も決して高くありません。
また、人によっては2年後、3年後に追加で採卵を行うのも難しい場合があります。そのため、妊娠を強く望み、卵子凍結をするのであれば、このタイミングで出来るだけ多くの卵子を凍結する必要があります。
と同時に1日でも早くパートナーと出会う必要があります。
とはいえ、焦るあまりに婚活に対して必要以上の妥協をすることもあまり勧められませんし、正直判断は難しいところです。
卵子凍結をしても妊娠の可能性はそこまで高くないことも含めて、費用対効果も含めて考える必要があります。
このようにある程度のライフプランを立てることで、本当に卵子凍結が必要なのか?何個凍結しなければいけないのかなどが見えてきます。
ライフプランをもとに本当に卵子凍結をするかどうか考えよう
ある程度のライフプランが見えてきたら、本当に卵子凍結を行うかどうかを考えましょう。
例1の女性の場合であれば、そこまで焦って卵子凍結をする必要はないかもしれません。
現在、不妊治療で行われる体外受精の多くは保険が適用されるため、1回の費用が10万~20万で済みます。自治体によってはさらに助成金が出る場合もあります。
卵子凍結の場合は、保険が適用されない上に保管料の支払いもあるため、採卵の費用、保管の費用、移植の費用を考えると100万以上の費用が発生します。
採卵時はどうしても採卵費用だけを見てしまいがちですが、トータル的な費用も視野に入れて考える必要があります。
また例3のような場合は、本当に高額な費用をかけてまで卵子凍結をするのかどうか、自分にとっての卵子凍結の位置づけを改めて考える必要があるでしょう
凍結した卵子が使用できる年齢には制限がある
卵子凍結時にライフプランを考える必要がある、もう一つの理由が「凍結した卵子を使用できる年齢に制限がある」という点です。
多くのクリニックは45歳から50歳の誕生日までを保管期限(使用期限)の上限に設定しています。
一度保管すれば、50歳を過ぎても凍結した卵子が使用できるわけではありません。クリニックが定めた年齢までに使用する必要があります。
また、クリニックによっては50歳以上でも使用できるクリニックはありますが、高齢での出産はリスクが高いこともあわせて知っておく必要があるでしょう。
また、日本の場合は提供精子での体外受精は基本的には認められていません。(一部行っているクリニックもありますが…選択肢としてはハードルがかなり高くなります)そのため、凍結した卵子を使用するためには、まずはパートナーを見つける必要があります。
確かに20代や30代前半で卵子凍結をすれば、時間的な猶予も出来、心にも余裕が生まれると感じる人もいるでしょう。
しかし、30代半ば以降になれば、凍結した卵子を使用するためにパートナーを探すことから考えればそこまで猶予はないのが現実です。
あわせて、40代後半での出産や50代、60代で子育てをしなければならないことも考えたうえで卵子凍結をするかどうか考える必要があります。
卵子凍結をすることによって、妊娠や出産などの焦りから解放されると思われがちですが、決してそうではないことは十分に理解し、ライフプランを考えたうえで卵子凍結をするかどうか決定するようにしましょう。
information
メルマガの案内
個別相談の案内 臨床検査技師・認定不妊カウンセラーの資格を持つ専門家が妊活・不妊治療・卵子凍結のご相談にのります オンラインで開催
お問い合わせ 研修講師・執筆などのお仕事の依頼も受けております。
書籍の案内
|