【妊活・不妊問題】不妊治療を取り巻く様々な格差問題② クリニック間の治療格差はあるのか?ないのか?

不妊治療クリニック選びに悩むご相談は実は少なくありません。

なぜ、多くの人がこれほどにクリニック選びに頭を悩ますのでしょうか?
そこには不妊治療クリニックがおかれている特殊な環境があります。

通常、普通に通う病院を探すのであればそこまでは悩みません。
例えば、歯医者に通うとします。

みなさんは何を基準に歯医者を選びますか?

・自宅から近いこと
・夜間診療があること
・土曜診療があること
・子連れスペースがあること

多くの場合は、自分が通いやすい条件で探すでしょう。

ここに、インプラントや歯科矯正など条件がある場合は、それも加味されるかと思います。
ちなみに私は、親知らずの抜歯が必要だったので医大の口腔外科出身の歯科医師が開業しているクリニックを探しました。

せいぜい技術的な要件を加味してもこの程度なのです。

よほどのことがない限り、隣の市町村や同じ県内でも40キロも50キロも離れた先の歯科クリニックは選ばないのでしょう。
ましてや、他県のクリニックを選ぶなんてことはまずないと思います。

しかし…不妊治療の場合は時にして他県のクリニックを選ぶ必要までが出てくるのです。

それぐらい不妊治療のクリニック選びは難しく、わかりにくいものなのです。

その原因の一つが「自由診療」にあるのではないかと思っています。

 

自由診療から見える不妊治療の闇

 

自由診療のメリットの一つは、医療側がコストを考えずに治療を提供できることだと思います。
患者側もたとえその治療が賭けであっても、新しい治療にお金があれば挑戦が出来ます。

また、不妊治療がこの40年で急激な発展を遂げたのも自由診療だったことは非常に大きな点だと思います。
保険診療に縛られなかったからこそ、新しい挑戦が出来、新たな技術が確立されていったのでしょう。

これが保険診療内であれば、新しい治療の承認に時間がかかり、ここまでの不妊治療技術の進歩はなかったかもしれません。

しかしそれらは同時に不妊治療の闇も生み出すことになったのです。
そして結果的に不妊治療患者に経済的にも精神的にも大きな負担を強いることにもなりました。

各クリニックが独自で技術力をあげた結果、様々な治療技術格差を生まれてしまったのではないかと私は感じています。
しかし、この格差は患者が外から見ただけではわかりません。
患者にとっては医師が不妊治療を掲げていれば、程度の差はあれどこにいっても基本的な部分は同じ治療が受けられるものだと思っているのです。

まさか自分達でクリニックを見極めて選ばなければならないなんて最初は誰も思っていないのです。
そして、地方であれ、都市部であれ同じ医療が受けられると思っています。

その結果、あまり治療技術のないクリニックで何年も同じ治療を繰り返し、お金も時間も費やしてしまっている人がいるのです。

 

それ以外にも、他の診療ではあきらかにトンでも医療と評されている治療でも、平然と行われているクリニックもあります。
不妊治療や産科・婦人科と関係ないクリニックが自由診療であるのをいいことに、妊娠のための体質改善を謳った根拠の乏しい高額な治療を提供しているクリニックもあります。

がん治療などではおかしな治療に関しては「おかしい」と医師が声を上げ始めているにもかかわらず、不妊治療の世界では見て見ぬふり、放置状態です。

 

治療格差はないという意見

こういう話になると「不妊治療クリニック間に治療格差はない」「わざわざ越県してまで遠いクリニックに通う必要はない」という意見を耳にすることがあります。

本当に治療格差はないのでしょうか?

多くの患者がクリニック間の治療技術の差を感じ、転院を繰り返しえています。

私が以前行ったアンケートでは8割の人が転院したもしくは転院を考えているという回答でした。
その中には2回以上転院をしている人が2割弱もいるのです。

とある方のツイッターのアンケートでは9割以上の人がクリニック間の治療格差を感じているという結果もありました。

治療格差はないという医療者側、治療格差を感じている患者
なぜ、こんなにも双方の感じ方に差が出てしまっているのでしょうか?

ちなみに私自身も、様々な方のご相談を伺いなら…
なぜ、ここまでもクリニック間で治療格差があるのだろう?とうなりたくなることがあります。

・普通なら当たり前に行われるべきことが、あるクリニックでは行われていない…
・男性不妊をしっかりみてくれるクリニックとそうでないクリニックがある
・5回も6回も新しい提案もなく同じ治療をただ、ただ繰り返されている。
・こちらからステップアップを打診しても何年も人工授精を続けさせられている。
(地理的に転院が難しい)

他にもあげだせばキリがありませんが、このような事を状況に一人で悩んでいる当事者は少なくありません。

もしかしたら、これらは治療格差ではなく「治療方針の差」だと思われているのかもしれませんが…

 

方針の違いか治療格差かは当事者にはわからない

確かに医師によって治療方針の差はあるでしょう。
自由診療の不妊治療となればなおさらです。

しかし、治療方針の違いなのか技術がないからの治療格差なのかは患者自身には正直わかりません。

例えば・・・・
治療方針の違いで最もわかりやすいのは「採卵の刺激方法の違い」です。
こちらは、少し不妊治療に詳しくなってきたり、治療年数が長ければ知っている人が多い治療方針の違いの一つです。

でも、これから始めて不妊治療をスタートする人にとっては初めて聞く言葉ばかり。
採卵一つにしても選択肢があること、そしてそれを自分たちで決めてクリニック選びをしなければならないなんてことは知らない人がほとんどでしょう。

そもそもクリニック選びの段階で方針に違いがあり、それを患者自身が選ばなければならないことがおかしいのです。
患者は治療に関しては素人です。
本来であれば、クリニックで検査結果などを見ながら医師と相談して治療方針を決めていくべきなのです。

それが出来るクリニックと出来ないクリニック
医療側からしてみれば方針の違いかもしれませんんが、患者側からみれば選択肢がない時点でこれもすでに立派な治療格差の一つなのです。

それ以外にも、男性不妊に関して適切な検査や治療をしてからステップアップを進めるのか、とりあえず顕微授精を繰り返せばそのうち…という提案では大きな違いです。

「うちのクリニックでは男性不妊は見ていません」という方針なのかもしれませんが、患者側からすれば「男性不妊を見れるだけの医師がいない」という治療格差でしかないのです。

何より、方針の違いが患者を迷わし、そして治療成績に差が出てくるのであれば、それこそ大きな問題なのではないでしょうか?

私は、この治療方針の違いが治療格差を生み出しているのではないかと思うのです。
そして、それらは患者側からしてみれば治療技術の格差にしか見えないのだと思います。

 

それでも治療格差、地域格差はある

患者が感じている治療格差は、医師にとっては治療方針の違いであって治療格差ではないのかもしれません。
でも、それでも治療格差、地域格差はあると私は感じています。

そしてここには培養士の技術格差も入ってくるのだと思います。

治療格差、技術格差があるから、不妊患者はよりよい、自分にあった治療を求めて転院をしていきます。
近くのクリニックで限界を感じたから、より良い技術と自分にあった治療方針を求めて他県に転院していきます。

実際に転院先のクリニックで新たな治療方法を提案されて妊娠していく人は少なくありません。
この選択肢を提示できなかった時点で、それは患者にとっては治療格差なのです。

そしてこの不妊治療の不透明さがより「格差」を感じさせる要因になっているのではないかとも思うのです。
わからない、見えないからこそ患者は余計により良い治療があるのではないかと彷徨います。

治療方針の違いが患者を迷わせているのではあればそれは立派な治療格差なのだと私は思います。

 

不妊治療の保険適用はただの経済的支援だけではなく、保険適用をすることで今まで不透明だった部分を明確にし、患者がどこのクリニックでもある程度同じ水準の治療を受けることが可能になります。
その結果、適切な治療にたどり着くまでの不要な時間がなくなることで、妊娠率の向上や2人目、3人目を望む余裕も生まれるのではないかと思います。

患者がクリニック間の治療格差や技術格差を出来るだけ感じない仕組みが1日も早く作られることを願ってやみません。
クリニック選び一つで神経をすり減らす…そんな世の中が1日も早くなくなってほしいものです。

そして例え治療方針の違いであっても治療格差や技術格差を患者が感じるのは事実。
だからこそ、クリニック選びは慎重に行う必要があります。

クリニック選びのポイントや押さえるべきところなども随時記事としてアップしていきます

 

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