【妊活・不妊問題】不妊治療の保険適用と助成金

厚生労働省は不妊治療に公的保険を適用するため、具体策の検討に入った。
菅義偉首相が少子化対策の一環として指示した。
今は高額な体外受精の保険診療は認められていない。
保険を適用する治療法、年齢、治療回数が主な検討課題となる。

参照:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO64105600R20C20A9NN1000/

昨年末ごろから急速に盛り上がりを見せていた不妊治療の保険適用が総理がかわり一気に進もうとしています。
(安倍政権下でも議論の準備はされていたのかもしれませんが…)

と、同時に今まで高額な不妊治療費の問題に見向きもしてこなかったところから反対の声も上がり始めています。
(何かしら動かれていたのかもしれませんが、それらは患者側には伝わっては来ていませんでした。)

「保険適用の範囲によっては高度な医療が提供できなくなる」
それが反対の理由の一つとして各種メディアで大きく報じられています。

今後、不妊治療の保険適用はどこまで進むのか、なぜ助成金では問題なのかを書いていきたいと思います。

 

不妊治療の保険適用に関する課題

 

不妊治療の保険適用に関しては様々な問題がありますが、ここでは以下の点について書いていきたいと思います。

 

保険適用の範囲と混合診療

不妊治療はこの40年間、各病院やクリニックで独自の治療法を確立してきました。
ざっくりとした流れは同じでも、一つ一つ細かに見ていけば、違う治療法や手技がたくさん出てきます。

これを今後、どこまで標準化していくのか?どこまで保険適用していくのか?というのがこの保険適用に関して大きな課題なのではないかと思います。

また賛否様々な意見がありますが、現在一般的に行われている治療法に関して、年齢や対象者によってはあまり効率の良いと思えない方法でも保険適用していくのかという課題もあります。

また、自由診療だったからこそ維持できていた、設備や人材もあるという意見もあります。
保険適用になると、今後はこれらの維持が難しいとの声も‥‥
ただ、これらは患者の高額な費用負担によって支えられていたものであり、すべてが本当に必要な費用であったかどうかの判断は患者からはわかりません。

そして、それらの高額な不妊治療費に納得がいかないからこそ、このように当事者の声が大きくなったという背景もあるのではないかと思うのです。
説明不十分にクリニック側に言われるがままに、納得する、しない関係なく治療費を支払ってきた、それが今の不妊治療現状なのです。

不妊治療に保険適用をと言っても、すべての治療や薬剤、技術、検査に保険を適用するのは難しいでしょう。
だからこそ、今後は混合診療についても議論が必要になってきます。

保険診療・保険診療外を明確にすることによって、患者側も選ぶ基準が出来ます。

今までは効果があるのか、ないのか半信半疑の状態で選択せざる負えなかったものが、保険が効くか効かないかという基準ができることになります。
自由診療では、そのオプションが標準的なものかどうなのかが患者側には判断できません。

今までは医師に「妊娠の可能性を上げたいんでしょう」という一言を言われてしまえば、もうそれ以上何も言えないのが患者心理でしたが、今後は保険診療内の治療、自由診療内の治療と明確に区別されることで、自由診療内の治療を進める際はどのような効果が期待できるのか、患者が納得いく説明が求められるようになります。

「保険診療になれば、今までと同じ治療が提供できないから助成金でいいのでは?…」では、効果の不透明な高額な治療がそのまま行われ続けることになります。
そうではなく、混合診療も視野に入れてどのようにすれば一部でも保険が適用できるようになるかを模索していってほしいと願います。

 

年齢と回数制限の問題

それ以外にも、保険適用に関しては、年齢制限や回数制限をどうするのか?という課題もあります。
ただ、この年齢制限や回数制限に関してはある程度今までのデータから導き出すことが可能かと思います。

また、保険適用年齢や回数を明確にすることによって、社会の意識の変化にもつながるのではないかと思います。

妊活や不妊治療の先延ばしの問題は決して患者当事者だけの問題ではありません。
社会の無理解が、妊娠適齢期での妊娠を望みにくくしているという背景もあるのです。

今では卵子の老化も広く知れ渡り、年齢とともに自然妊娠の可能性も、不妊治療で妊娠する確率が下がることも当事者の女性はよく知っています。
しかし、周りはそうではありません。
不妊治療すれば、30代後半でも40代でもたやすく妊娠できると思っている人はまだまだ少なくないのです。

 

そして回数制限は、むやみに治療を繰り返すことの歯止めにもつながるのではないかと思います。

今の不妊治療は誰も辞め時を示唆してくれません。
その為、当事者夫婦が治療終了を決断することがほとんどです。

可能性の低い治療を繰り返していると医療側がわかっていても終わりを示唆してくれることはあまりありません。

もちろん補助金の回数も一つの区切りにはなりますが、保険が効かなくなるという事のほうがより明らかな区切りになるのではないかと思うのです。

保険適用にすることで、高齢夫婦が可能性の低い治療を繰り返すことになるのでは…という声もあがっていましたが、今の自由診療下の不妊治療ではそれが平然と行われているのです。
可能性が低い治療を繰り返していると思うのであれば、それは保険適用の有無にかかわらず、医療側がはっきりと最初の治療説明会の段階で患者側に伝えるべきことなのだと思います。

 

 

不妊治療の保険適用と少子化対策

不妊治療の保険適用が話題になると、不妊治療で保険を適用しても根本的な少子化対策にはならないという声が聞こえてきます。
確かに、保険適用だけでは根本的な少子化対策にはならないでしょう。

団塊ジュニア世代が生殖年齢を終えようとしている今、ここまで進んだ少子化をV字回復させることは正直ほぼ無理に等しいのではないかと思います。
そもそも団塊ジュニア世代でさえ、3人、4人兄弟は珍しいことです。
この時点で日本は少子化に向けて歩みを進め始めたのではないでしょうか?

あれから40年、度々、少子化が問題視されましたが効果のある対策がなされないまま今に至っているのです。

これから先は、これ以上少子化を加速させない、人口減少の中でどのように国を経済を回していくかを考えていかなければならないのだと思います。

そもそも、結婚するしない、子供を持つ、持たない、何人子供を望むかは個人の自由です。
結婚したくない人に結婚しなさいとも、子供を望んでいない人に子供を産みなさいとも、子供は一人で十分と思っている人に2人、3人産みなさいとも誰も命令できないのです。

でも…
結婚したいのにチャンスがない
子どもが欲しいのに授からない 経済的な理由で不妊治療は諦めている
子どもが欲しいけど経済的な問題で諦めている
子どもが欲しいけどワンオペ育児に限界を感じて2人、3人は諦めている

そういう人たちもたくさんいるのです。

また、私自身も不妊治療退職をしなければ2人目を考えていたと思います。

子どもを望んでいない人に、出産を強要することはできません。
でも、何らかの理由で子供を望んでいるにもかかわらず諦めている人がいるのであれば、それらを支援することで少しは少子化のスピードを遅らせることが出来るのではないかと思うのです。

そして不妊治療の保険適用も、それらの支援の一つなのだと思います。

不妊治療の保険適用だけを頑張っても、きっと何も変わらないでしょう。
なぜ、これだけ多くの人が子供を持たなくなったのか?そこに目を向けて同時に様々な手を打っていく事が必要なのだと思います。

 

助成金の拡大ではなぜダメなのか?

 

経済的な支援を望むのであれば、助成金の拡大でいいのではないか?そのような意見もあります。
確かに、経済的な支援だけであれば助成金の拡大で十分なのかもしれません。

しかし、自由診療の不妊治療において、助成金が拡大されただけでは解決しない問題がたくさんあるのです。

昔は60万、70万と言われていた体外受精がいつのまにか1回で100万を超えることも珍しくありません。
同じ検査を受けていてもクリニックによって数万円の差が出る。
人工授精一つ取っても、クリニックによって値段設定はまちまちです。

これがさらにややこしい体外受精や顕微授精になれば何が価格の違いなのか比較することすらできません。

気づけば、様々なオプションが付加され補助金分価格が上がる可能性もないわけではありません。

助成金の拡大だけではこの不透明な不妊治療の世界は不透明なままなのです。
そして、この不透明さの中に治療技術格差が埋もれてしまい、結果的に不妊治療患者を遠回りさせることに繋がっているのではないかと思うのです。

 

 

不妊治療の保険適用はどこまで進むのか?

不妊治療支援に関しては「かなり突っ込んで思い切ったことをやりたい」と発言されていた菅総理

体外受精、顕微授精まで保険適用になるのか?
それとも人工授精どまりになってしまうのか?

当事者の中では大きな注目事項になっています。

ただ、正直2年という期間で適用範囲や混合診療も含めてどこまで決められるのだろうか?という疑問は正直あります。
保険適用は2年も先なのか?という声もありますが、2年ですべてが決まれば正直かなり早いのではないかと思うのです。

もちろん早いに越したことはないのですが、その結果使えないような、形骸化されてしまうような内容では意味がありません。

それであれば、時間はかかるかもしれませんが、混合診療の解禁も含めてしっかりと議論を進めてほしいものです。
2年という期間をゴールにするのではなく、形ある、使える保険制度が出来上がるのをゴールにしてほしいと願ってやみません。

 

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