【妊活・不妊問題】 妊活・不妊治療はステージによって求めるものが変わってくる

現在、不妊治療の保険適用に向けて厚生労働省が中心となってヒアリング等が行われ、先日、厚生労働省から不妊治療の実態に関する調査研究があがってきました。

この調査報告書は前半は、ART(体外受精)実施認定施設への調査結果、後半が当事者への調査結果になっています。

ただ残念なことに、ここ1年、2年のうちに不妊治療をしていた当事者の声はどこまで反映されているのだろうか?という報告書でした。

 

こちらは資料の一部を抜粋したものですが、アンケートの56%が40歳以上であり、今も継続的に治療を行っている人は22.9%しかいないという内容です。
また、実際に高度生殖医療を受けた人も34.7%でした。

今、不妊治療をしている現役の当事者の思いを、これからの制度に取り入れようと考えているのか?と疑問を感じる報告書でした。

そもそも、妊活や不妊治療はそん時のステージで悩みも知りたいことも求めていることも変わってきます。
だからこそ、現役の当事者が何を求めているか、国はしっかりと調査をし把握してほしいと思わずにはいられません。

 

治療を始める前、治療中、治療終盤で当事者が求めているものは変わってくる

今回、厚生労働省が行っていたヒアリング調査などを拝見しながら感じたのは、治療終盤の方達への支援のためのヒアリングなのではないかという事でした。

特別養子縁組、卵子提供、精子提供、これらは一通りの治療をやり切った後にたどり着く過程です。
もちろん、日本はこの部分の法整備も遅れていますので、これから必要な事になってきます。
しかし、ではそこにたどり着くまでの不妊治療に関して十分なのか?と言われたら、残念ながら十分とは言い難い状況です。

そもそもアンケート調査をするのであれば、

・治療前
・治療初期(高度生殖医療ステップアップ前)
・高度生殖医療中
・治療の終わりを考えているタイミングの人
・不妊治療を終えた人

のように、ステージをわけて調査をする必要があるのではないかと思います。

そして今回、不妊治療の保険適用に大きく関わってくるのは、これから不妊治療を考えている人から今現在、高度生殖医療中の人のはずです。
その層の人たちが、今何に困っているのか、悩んでいるのかを今後の保険制度に反映していってほしいと思います。

 

不妊治療当事者の悩みは

これは多くの当事者がSNSで声を上げていますが…当事者の悩みは決して高額な不妊治療費や不妊治療と仕事の両立の問題だけではありません。

・乱立するクリニック選びの難しさ(都市部)
・クリニックの選択肢がない地方
・何を基準にクリニックを選べばいいのかわからない
・何が標準的な治療なのかわからない
・実績のあるクリニックはどうやったらわかるのか?

など、クリニック選びの難しさに声をあげる当事者は少なくありません。

表に出てくる情報の少なさに、多くの当事者はとりあえずでクリニックを選び、そして転院を繰り返しているのが現状です。
転院を繰り返すことで、費用だけではなく時間のロスもそこには発生してきます。

そしてそのロスが結果的に妊娠を遠ざけることにもなりかねません。

厚生労働省の不妊治療の実態に関する調査研究報告書に不妊治療開始時に何が不安であったかという質問項目がありましたが、女性の74.3%、男性の57.4%の人が『妊娠できるかどうかの不安』をあげています。この不安は多くの人が持って当然の不安です。

そして『妊娠できるかどうかの不安』だからこそ、その不安を解消するためにも、少しでも技術力の高い・妊娠率(出産率)の高いクリニックを探して当事者は彷徨います。
そこで不妊治療クリニックが開示している情報の少なさ、自由診療が故のクリニックごとの方針の違いに戸惑うことになるのです。

 

だからこそまずは、当事者が安心してクリニックを選ぶことが出来るように『不妊治療クリニックの公正な情報開示』が必要になってくるのだと思います。

 

求めている不妊支援は一つではない

当事者が求めている不妊支援は治療の段階によって変わってきます。

今回調査やヒアリングが行われた、特別養子縁組や卵子提供、精子提供などの支援ももちろん必要な支援の一つです。
年齢や難治性の不妊の場合は、必ずしも高度生殖医療を行っても妊娠・出産に至るとは限りません。

その時は、メンタル面のサポートや特別養子縁組や卵子提供、精子提供などの選択肢を時間をかけて相談できる場が必要になってきます。

しかし、それらは最初にも書きましたが治療の最終段階です。
治療をやり切れたと思えるからこそ、特別養子縁組や卵子提供、精子提供などを含め次の選択肢に進むことが出来るのではないかと思います。

不妊治療クリニックの情報提供が不十分な現状で、不妊治療をやり切ったと思える人はどれぐらいいるのでしょうか?
情報が見えないからこそ、違うクリニックに転院すれば…もしかしたら妊娠できるのではないかと、転院を繰り返してしまうのではないかと感じます。

#不妊治療の公正な成績開示を求めます  の声にも上がっているように、各クリニックの公正な成績開示をはじめ、治療指針の標準化など、まずは当事者が迷わずにクリニックを選び、治療に専念できる環境の整備を願ってやみません。

そのうえで、特別養子縁組や卵子提供、精子提供などの法整備、情報提供やメンタルサポートをしてくれる場の充実(認知も含め)、不妊治療と仕事の両立支援、不妊治療の地域格差解消なども同時に進めていってほしいと願っています。

そして何より、不妊治療は進化の激しい世界です。10年前や20年前と今では悩みや問題点も大きく変わってきます。
だからこそ、今治療をしている当事者の意見をこれからの制度に反映させてほしいと思います。

そしてどれか一つだけを進めるのではなく、妊活・不妊治療の段階に応じた支援や法整備が進むことを願っています。