【妊活 不妊問題】 なぜ日本は不妊大国となったのか?後半
前半の記事はこちらから…
気付けば「不妊大国」とよばれるようになってしまった日本。
5.5組に1組のカップルが不妊で悩むようになった今。
もしかしたら不妊かも? 子供を授かる事は出来るのだろうか?と一度でも悩んだことのあるカップルを加えると3組に1組 2組に1組と決して「不妊」は他人事ではないのが現状である。
なぜ日本はここまで「不妊大国」になってしまったのか?
後半では5以降から書いていきたいと思います。
1 出産を望む年齢の高齢化
2 高額な不妊治療費の問題
3 不妊治療と仕事の両立問題
4 妊活したいのに出来なかった 二人目不妊
5 治療技術格差
6 知識・情報不足
7 必要以上の自然信仰
8 自分たちは大丈夫と言う思い込み
9 技術の前に立ちはだかる法規制
5 治療技術格差
不妊治療に関しては厳密に治療の進め方、治療の仕方が決まっているわけではありません。
タイミング法などで保険で使用できる薬に違いがあったり、着床前診断のように審査を受けないと出来ない検査があったりはするが、基本医師の方針によって治療方法は千差万別、本当に様々です。
ただ、同じような治療方法を数年続けるだけのクリニックもあれば、AがダメならB BがダメならCと様々な手段を持ち合わせているクリニックもあります。
中には漠然と5年以上タイミング法と人工授精を繰り返していたというご相談者さんもいました。
医師からステップアップの話がなかったから、いつかこの方法で妊娠できると疑わなかったそうです。
排卵誘発においても高刺激から低刺激・自然採卵と様々な誘発を患者さんにあわせて行うクリニックもあれば、自然採卵のみしか行いませんというクリニックもあります。
また最近は未成熟卵の採卵をするクリニックも出てきました。
着床不全に関しても数年前と比べて様々な検査が可能になってきました。
闇雲に体外受精を繰り返さない…そんなクリニックも増えて来ました。
その反面、治療技術格差が大きくなってきたのも事実。
最初に選んだ病院でその後を大きく左右される不妊治療当事者も少なくありません。
当事者自身が勉強するのには限界があります。
しかし、それでも自分で調べて学んでクリニックを選んでいかなければならないのが現状なのです。
ただこの話は選べるだけクリニックがある首都圏や大都市圏の話です。
地方にいけば一気に不妊クリニックは減ります。
特に専門の不妊クリニックとなると車で1時間、2時間、高速道路を利用しないといけません…そんなお話を伺う事も少なくないのです。
例えば私の住んでいる滋賀県
まず体外受精まで実施している不妊クリニック(医大を含む)が10件以下です。
10件もあればと思われますが、それらのほとんどが実は南部地域に偏っています。
南部地域以外にあるのはたった2件。
北部地域の人が転院を考えると、片道1時間の通院では効かなくなってくるのです。
通院時間、通院にかかる交通費を考えると転院に二の足を踏む人は少なくありません。
どこに住んでいても、どのクリニックに通っても同じような治療が受けられれば良いのですが、それが出来ないのが不妊治療クリニックの現状なのです。
自分にあった不妊治療をもっと早くに選択できていれば妊娠出来たかもしれないのに…
そんな後悔の声を聴くこともあります。
6 知識・情報不足
不妊治療当事者になってはじめて「妊娠・不妊」について調べる人、学ぶ人も少なくありません。
またよくわからないから…医師にお任せですという言われる方もいらっしゃいます。
「治療技術格差」でも記載したように、医師やクリニックの方針が自分にあっているのか?を見極めながら治療を進めていくことが必要です。
その為にはやはり最低限の知識と情報が必要になってきます。
「卵子の老化」が話題になってからは、妊娠にはリミットがある、年々妊娠率は下がり、流産率があがることは知られてきましたが、それでもついつい「40代」で妊娠している人もいるから…と安心しがちな方も少なくありません。
グラフを見て頂いたらわかるように、年齢と共に妊娠率は下がり、流産率はあがっていきます。
40歳を過ぎたら出産まで至る人は10人に1人です。
不妊の定義は避妊をしなくなってから1年と言われていますが、35歳以上であれば半年ぐらいで検査にいく事が望ましいと思いますし、そのように推奨されてい医師も結構いらっしゃいます。
また、年に数回しか生理が来ない、生理周期が極端に短い、生理痛が酷いなどの場合は半年や1年待たずに受診することが必要です。
過去にクラミジアなどの性感染症に羅漢している場合も同様です。
しかしこのような知識はどこかで学ぶことはまずありません。
ネットなどでも中々系統たてて記載されているところは少ないのが現状
必要な情報や知識が伝わっていない。
これも日本が「不妊大国」になった要因の一つではないでしょうか?
7 必要以上の自然信仰
出来るだけ自然が良い…明確な医療否定ではないものの「自然志向」の人は実は少なくありません。
特に「不妊」の分野になるとそれが顕著に見られることがあります。
「不妊治療なんてしなくてもいつか自然に授かるから…」という人から、「不妊治療なんてそんな不自然な事を…」と言われる人もいます。
また、周りの「自然信仰」に振り舞わされている人を見かける事もあります。
自然に任せるのか、それとも不妊治療にステップアップするのか、それらを決めるのは当事者のみです。
当事者が納得して決めたことであれば問題ありません。
しかし、必要以上に「自然である事」を周りが煽っている事を見かける事があります。
5年かけて体質改善や生活習慣の改善を行うより、そのタイミングでステップアップした方が授かる可能性は高いのです。
そして「不妊治療」に頼らないと妊娠に至らない場合もあるのです。
だからこそ、3年・5年と長期に渡って自然妊娠に拘る事は妊娠の機会を遠ざける事にもなり兼ねません。
どうしてもお金がかかる不妊治療ですから、自然に授かればと…いう気持ちもわからないわけではありませんが…
メリット・デメリットを知った上でどのように妊活や不妊治療を進めていくかを考えて行く必要があります。
と、同時に周りが必要以上に「自然であること」を煽らない事も必要ではないかと思います。
食事や生活習慣だけで妊娠の有無が決まるわけではないのですから…
8 自分たちは大丈夫と言う思い込み
これは「7 必要以上の自然信仰」と似た部分もあるのですが、なぜが「自分たちだけは大丈夫」、「そのうち授かるから」、「きっと今はタイミングではないだけ。」そのように自分たちに言い聞かせているカップルも少なくありません。
本当にそのように思っているのか?それとも現実と向き合いたくない為の「逃げセリフ」なのかはわかりませんが…
男性が不妊クリニックに行く事を必要以上に拒み、このような言葉が出てくる時は後者ではないかと思う事もあります。
結局は知識や情報の不足が引き起こしている問題なのではないかと思うのです。
そして知識や情報を与えるだけではなく、それらを自分に落とし込んで考えていく機会を設ける事も必要なのかもしれません。
プレコンセプションケアが最近は話題になってきていますが、自分たちのライフプランに落とし込みながらこれらの教育を充実させることも必要なのではないかと思います。
9 技術の前に立ちはだかる法規制
卵子提供・精子提供・代理母出産…確かに「倫理的な問題」は山積しています。
特に出生について産まれてきた子どもにどのように説明するかは重要な問題です。
また、産まれてくる子どもの事を第一に考える必要があります。
私自身もこの分野に関しては講演会や書籍などの知識や情報しかありませんが難しい問題だと感じています。
ただ「倫理的な問題があるから」という一言で議論が進んでいないのも事実。
議論が進まない…という事も含めて考えて行く必要があると思います。
そしてここに同列に並べられがちな着床前スクリーニングの問題
これに関しては語りだすと長くなってしまう事、慎重に記載していく必要がある為、詳しく書くことは別の機会にしたいと思いますが、日本では一定の条件をクリアしないとこの検査は受ける事が出来ません。
その為、着床前スクリーニングを実施すれば着床しない、若しくは育たないと判断できる受精卵まで移植しているのが現状です。
体外受精を繰り返しても結果が出ない事に悩んでいるカップルは決して少なくありません。
そしてこの着床前スクリーニングを希望しているカップルも少なくないのです。
「倫理的な問題があるから」という言葉で終わらせたり先延ばしにしたりするのではなく、積極的な議論が不妊で悩む方の一筋の光になるのではないかと思います。
この分野に関してはいつかしっかりとした記事にしたいと思います。
まとめ
今回は9つの要因にわけて、簡単に日本が不妊大国となった要因を記載してみましたが、実際はもっともっと複雑に様々なことが絡み合っているのだと思います。
確かに妊娠年齢があがっていったことが不妊要因の大きな一つであることには変わりないでしょう。
では、「早く結婚して早く妊娠をしましょう」という一言で片付くのかというとそんな単純な問題ではありません。
ますます、30代を過ぎての妊娠・出産は増えていくでしょう。
だからこそ「不妊治療」を必要とする人ははこれからもっと多くなっていくことだと思います。
治療費、治療技術格差・地域格差、仕事と治療の両立…
様々な問題と向き合い、改善方法を考えることが「不妊大国日本」を抜け出す方法ではないかと考えます。
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