【妊娠・出産】 子供を産み・育てられる社会を
先週の話になりますが、またまた国会議員の失言が話題になりました。(そもそも失言で済ませて良い問題ではないですが…)
「結婚しなくたっていいっていう女の人が増えちゃった。ここにいる人は子どもを産める年齢の人が比較的少ないですが、自分たちのお子さんやお孫さんには最低3人くらい産んでくれるようにお願いしていただきたい」(自民党 桜田義孝前五輪相 29日)
参照 https://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye3687157.html
ニュースというものは一部を切り取られて報道されやすく、正直なところ前後の文章はわからないので、これだけで判断するのもどうかとは思うが、デリケートな問題故に発言にも最善の注意が必要であったのではないかと思います。
もちろん、この発言の意図もわからないわけではありません。
人口維持には合計特殊出生率が2.07必要 になってくるからです。
ただ、政治家である以上「産んで欲しい」と言うのであれば、「産み・育てられる」社会をどのようにつくっていくのか?そのような話も一緒にしていく必要があるのではないか?そんな風に思うのです。
ましてや、「結婚しなくてもいいっていう女性が増えた」と少子化を女性のみに転化するのはどうなのかと思います。そもそも子供を授かることも、子育ても女性一人で出来るものではないのですから…
ちなみに可能であれば出産したい、そう願っている夫婦は決して少なくありません。
参照 https://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/whitepaper/measures/w-2018/30webhonpen/html/b1_s1-1-5.html
ただ、授かれない、産めない理由があるのです。
「産まない」のではない、今の社会では「産めない」のである
政治家が「産んで欲しい」とどれだけ言っても、「育てやすい」社会にならないと、子供を産む事は出来ないのです。
・子供にかかる教育費の問題
・待機児童問題
・保活後は小学校1年生の壁
・ワンオペ育児
・男性育児休暇取得後の不当な扱い(パタハラ)
・産後鬱の問題
・不妊治療費の問題 など
安心して子供を産み育てる為には解決しなければならない問題が山積なのです。
そこに言及することなく、ただ「3人、産んで欲しい」といわれて「はい、そうですか」とはならないのが現実なのです。
せめて、「子供を3人」というのであれば、この問題にどのように取り組んでいくのかきちんと言及してほしかったと思います。
参照 https://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/whitepaper/measures/w-2018/30webhonpen/html/b1_s1-1-5.html
産みたい、子供が欲しいと頑張っているカップルへの支援を
「欲しいけど出来ない」…と答えている人が23%います。
5.5組に1組が不妊に悩む今、不妊の問題は決して他人事ではありません。
また、一人目は自然に授かっても、2人目、3人目で不妊に悩む人も少なくありません。
その中でも、不妊治療当事者の大きな悩みの一つが「不妊治療にかかる費用」です。
不妊治療の多くは自由診療になり保険が効きません(一部保険適用あり)。
その為、体外受精や顕微授精にステップアップすると、50万以上、場合によっては100万以上の費用がかかることがあります。もちろん助成金も出ますが、到底すべてを補える金額ではありません。
不妊治療の保険適用は様々な理由があって簡単なものではないのでしょう。
しかし、少子化をなんとしても解消したいのであれば保険適用がすぐに無理であっても、助成金額のアップや助成金適応の拡大などの取り組みを進めていってほしいと願います。
女性に偏る負担軽減へ
男性の育休取得の義務化が話題になっていますが(同時にパタハラも話題に…)、しかし大変なのは産後だけではありません。
保育園に入所出来ても、子供はいつ風邪を引くかわかりません。その度にお迎えに呼ばれるのは母親。小学校にあがれば手が離れるとおもわれがちですが、そう簡単に手が離れるわけではありません。
その度に女性は自分の働き方に悩みます。
実際に「自分の仕事に差し障るから産めない」と答えている人が15.2%います。
2度、3度の産休・育休の取得は難しい…そんな声も耳にします。
国は産んで欲しいと望む反面、産休・育休が歓迎されない企業も少なくありません。
とはいえ、仕事を辞めてしまうと子供の教育費など今度はお金の問題に直結してしまいます。
子育てにはお金がかかります。実際に上のグラフでも「子育てにお金がかかりすぎるから」と答えている人が56.3%にも上ります。
子供を2人、3人と育てるのであれば夫婦共働きが必要な家庭がほとんどです。
確かに、産休や育児休暇制度は浸透してきました。出産を理由に退職を求められる人は一昔前に比べると大きく減ったでしょう。
産休・育休を経て働き続ける女性も増えました。しかし、負担はまだまだ女性に偏っているのが現状です。
参照 https://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/whitepaper/measures/w-2018/30webhonpen/html/b1_s1-1-5.html
不妊治療と仕事が両立可能な社会へ
不妊治療時に仕事と治療の両立に悩み、退職若しくは仕事を変える人、不妊治療を辞める人が35%というデーターも出ています。
仕事を辞める事で「不妊治療費」という問題がより大きくなってきます。
また、治療ではなく「仕事」を選択することで、「子供を産みたい」という思いを諦める事にもつながっていきます。
仕事と不妊治療の両立が可能であれば、その後の結果が変わったかもしれない…という人も少なくないはずです。
「子供を3人」と望むのであれば、働きながら産み・育てることへの制度や支援はかかせません。
また、制度だけつくっても、〇〇認証なんていう認証マークだけをつくっても、利用者が不利益を被らずに制度を利用できるように社会の意識を変える事も必要になってきます。
妊娠・出産は女性だけの問題ではない
そして今回の発言に一番ひかかったのはこの一文でした。
「結婚しなくたっていいっていう女の人が増えちゃった」
妊娠・出産は決して女性だけの問題ではありません。
そもそも晩婚化が進んでいるのは男女共です。子供を望まない選択をしているのも決して女性だけではありません。
実際、上のグラフでも「夫が望まないから」という解答が8.1%あります。
実際に不妊のご相談を受けていてもご主人があまり積極的ではない、もしくは「いつか授かるだろう…」と真剣味に欠くというようなご相談も少なくありません。
それにも拘わらず、毎回やり玉にあげられるのは「女性」です。
産まない選択をした女性のせいで少子化が止まらない、不妊は個人の問題だ、自己責任だ…としている以上は「少子化」の問題は解決しないのではないでしょうか?
最後に…
少子化の問題は放置出来る問題ではありません。
しかし、ただ単純に「女性が子供を望まなくなった」から少子化が進行しているだけではありません。
なぜ、「産まない」選択をする夫婦が増えたのか?
その問題を1つずつ紐解いていかなければ、少子化が解決することはありません。
そして、ぜひ「産みたいけど授からない」不妊に悩んでいるカップルへの支援が進ことを願ってやみません
保活の問題
ワンオペ育児の問題
不妊の問題
様々な問題が解決に向かい、産みたい人が産める社会、産みたいと思える社会になればと思います。
*今回は「産む」という事に焦点を当ててこの記事を書きましたが、決して「子供を持つ事」が全てではありません。「産む」という選択も「産まない」という選択も、当事者である夫婦が決める事であり、周りがあれこれと関与するべきことではありません。最後に追記させて頂きます。
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≪プロフィール≫ 笛吹 和代 関西を中心に活動し、臨床検査技師の国家資格を保有する、日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー 自身の不妊治療退職をきっかけに「働く女性の不妊治療退職ゼロ」を目指して、妊活や不妊の悩む女性の個別相談を行ったり、セミナー講師として活動したり、妊活や不妊をサービスとする専門家向けの講座も行っている。 また、働く女性向けサイトで妊活コラムも担当 2017年5月 医療職とファイナンシャルプランナーによる妊活や不妊で悩む女性を支援するプロジェクトチームを立ち上げる。2018年9月には第1回目の妊活イベント「ワタコレ」を関西で開催し100名を超える方で当日はにぎわった ≪経歴≫ 子どもの頃から身体の仕組みに興味があり、医療系の学部に進学する。 その後健診現場に復帰するが、自身の経験から不妊で悩む女性の支援をしたいと事業をスタートさせる。現在は当事者支援と不妊予防を伝える事に力を入れている。 ≪講座開催実績≫ ≪コラム掲載≫ ≪取材実績≫ ≪ラジオ出演≫ 講師・取材・執筆依頼は下記からお問い合わせください |