【不妊クリニックの選び方①】 妊娠率を優先して不妊クリニックや病院を選んで大丈夫?

不妊クリニックを選ぶとき、どのような点を考慮しながら選びますか?
通院のしやすさ、診療時間、治療実績、治療内容…

その中でよく伺うのが、クリニックが提示している妊娠率を参考に選ぶという話です。また、妊娠率が高い(優れている)クリニックを紹介してほしいという相談を伺うこともあります。

ただ、クリニックを選ぶ際に「妊娠率」を優先したクリニック選びはお勧めしていません。なぜ「妊娠率」を優先しないほうが良いのか?についてこの記事ではお伝えしていきます

 

妊娠率を求める母集団が不明瞭でクリニック間の比較できない

妊娠率を出す時に重要になってくるのが、分母の母集団です。

この母集団に、採卵できなかった人・初期胚まで育たなかった人、・盤胞のグレードが低く移植できなかった人が含まれているかどうかで、妊娠率の数値は大きく変わってきます。

ここで簡単に仮の数値を使ってどのように妊娠率が変わるのかを説明したいと思います
(計算しやすい数値を設定していますので実際の数値とは関係ありません)

以下のような条件で計算してみます

患者数 1000人
採卵できた人 950人
受精した人 900人
胚移植出来た人 700人
妊娠に至った人 250人

患者数を分母にした際の妊娠率 25%
胚移植出来た人を分母にした際の妊娠率 35.7%

妊娠を望んで受診した1000人のうち、採卵できない、受精しない、受精卵が育たなかった300名を分母に加えないことで、妊娠率を高くみせることが可能なのです。

胚移植に条件をつけることで、さらに分母を絞ることも可能です。
移植条件に胚盤胞のグレードを加えます。そうすると、さらに胚移植出来る人は限定されることになります。

例えば、BB以上の胚盤胞のみ移植とすると、
患者数 1000人
初期胚・胚盤胞になった人 700人
胚盤胞移植が出来た人 450人
妊娠に至った人 250人

胚盤胞移植した人を分母にした際の妊娠率 55.5%

どうでしょうか?
先ほどの、患者数を分母にした際の妊娠率25%や、胚移植出来た人を分母にした際の妊娠率35.7%と比べると数値が全然違うのがわかると思います。

そしてこの55.5%には妊娠を望んで受診した550人は含まれていないのです。

今回は治療過程における母集団の違いで数値の差を示しましたが、それ以外にも、年齢や、女性の原因の違い、男性不妊の有無などの違いでも妊娠率は変わってきます。

クリニック同士で妊娠率比較するためには、まずはこれらの母集団条件を揃える必要が出てきます。

 

クリニックが提示している妊娠率は「胚移植」あたりのデータの可能性がある

確率を求める際に重要になってくるのが、どのような集団のデータを分析したのかということです。

ただ各クリニックが現在ホームページに「妊娠率」を記載するにあたって、母集団に関する決まりはありません。

そのため、「胚移植」までたどり着いた人を母集団として妊娠率を表示することも可能なのです。

日本産婦人科学会が出している治療成績より極端に数値が高いクリニックの場合、「胚移植」あたりの妊娠率の可能性が高いと考えた方が良いでしょう

このグラフでは、胚移植あたりの妊娠率は一番上の青いグラフになります。すべての治療当たりの妊娠率は赤いグラフ。

クリニックを選ぶ際に妊娠率を参考にするのであれば、この赤いグラフ、もしくは一番したの黄緑のグラフ(出産した人)数値で判断しなければならないのですが、胚移植あたりの青いグラフで数値を記載しているクリニックもあるのが現状です。

先述しましたが、胚移植あたりの妊娠率の場合、採卵できなかった人や、採卵できても移植胚まで成長せずに移植できなかった人が含まれてらず、本来の数値を表しているとは言い難くなります。

 

特定不妊治療指定医療機関の情報公開データはクリニック間を比較するためのデータにはならなかった

不妊治療の保険適用が決まった時に、特定不妊治療指定医療機関の情報をデータとして公開し、クリニック選びの参考にするために調査が行われました。

しかし、残念ながらこの調査結果は患者がクリニックを選ぶための参考データにはなりませんでした。

理由はいくつかありますが…

・任意調査であったため全てのクリニックが回答しなかった
・凍結胚移植に関しては採卵あたりではなく、移植あたりの調査であった
・35歳~40歳未満という特定の年齢だけの調査であった

あたりが主な理由でしょうか。

また数値の記載間違いでは?と思われるようなクリニックもいくつか見られ、この数値を参考にクリニックを比較検討するのは難しく感じました。

 

条件が多すぎて簡単には比較検討出来ない

不妊治療の場合、年齢や総治療あたりなどは母数をそろえることは出来ますが、それ以外の要因も多く、全てを加味して母数をそろえることは難しくなります。

特に原因不明などの難治性不妊の患者さんや重度の男性不妊の患者さんが集まるクリニックは統計処理をすると、どうしても数値的に不利になってしまいます。

見えない背景も加味してクリニック選びが出来ればいいのですが、それはなかなか至難の業。どうしても数値だけの比較になりがちです。

不妊クリニックを選ぶときに気になる治療成績ですが、残念ながらクリニックを出している数値を鵜呑みにすることは出来ません。

また、クリニックの転院先を選ぶ際は治療成績という数値だけではなく、自分の現状を整理して、必要な治療を選択できるクリニックを選ぶ必要があります。

妊娠率になっている母数の背景がわからない以上、あくまでもクリニックが公開している数値は参考程度に捉えておいた方がいいでしょう。

何を基準にクリニックを選べば良いのかは、また別記事でお伝えします

 

 

 

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